【わかりやすく解説】森林の役割・働きとは|放置林・森林の高齢化との関連性も

【わかりやすく解説】森林の役割・働きとは|放置林・森林の高齢化との関連性も

森林には多面的な機能を持つとされており、地球環境を守るだけではなく、様々な役割と働きがあります。

そこで今回は「森林の役割・働き」から、「森林がなくなるリスク」、「日本の森林が抱える問題」、「森林の持続可能性を高める方法」についてまで、“木材のプロ”が詳しく解説します。

内装木質化におすすめの建築材料も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

このコラムのポイント
●森林は、地球環境・経済発展・文化継承など多面的な役割を持ち、今後減少・消失すれば、私たちの生活に大きな影響をもたらします。

●日本では、適切に管理されていない「放置林」や、伐採に適した時期を過ぎた「老齢化森林」が増えており、このままでは倒木・地滑りなどの自然災害や、森林のCO2吸収効果の低下につながる可能性があります。

●森林の持続可能性を高めるためには、林業の変革に加えて、建築物の木造化・内装木質化が有効です。

●恩加島木材は、高品質・レパートリー豊富で環境にも配慮した「突板化粧板」を製造販売しております。


森林がもつ“8つ”の役割・働き

森林がもつ“8つ”の役割・働き

日本学術会議は、「森林の有する多面的機能」と称し、森林が私たちの暮らしに役立つ働きについて言及しています。

生物の多様性保全

日本の森林は、200種類以上もの生物(動植物・鳥類・昆虫など)が生息する場所です。

また、遺伝子や生物種(植物種・動物種・菌類種)、生態系を守る上でも、森林は欠かせません。

地球環境の保全

森林は、地球環境を温暖化などの破壊から守るための役割を持ちます。

具体的には、3つの働きがあり、それぞれ地球環境への影響は小さくありません。

地球環境への効果日本の森林が持つ貨幣評価・詳細
二酸化炭素吸収【貨幣評価※】1兆2,391億円/年

⚫︎森林の木々は成長するために光合成を繰り返し、その過程でCO2を吸収し、幹などに固定する
⚫︎日本国内の森林が年間で吸収するCO2量(約5,020万CO2tのうち、森林の吸収量は約4,568万CO2t(全体の91%相当)
化石燃料代替エネルギー【貨幣評価】2,261億円/年

⚫︎木造住宅は、非木造住宅と比べて材料製造時の炭素放出量が少なく、材木は建物になった後も炭素を貯蔵(固定)する(RC造の材料製造時における炭素放出量は「木造の4倍以上」、炭素貯蔵量は「木造の1/3以下」)
⚫︎非木造と比べて化石燃料の消費量とLCCO2(ライフサイクル・CO2)の排出量を減らせる
地球気候システムの安定化⚫︎地球表面の気候に影響を与える「大気・海洋・地表面・雪氷圏・生物圏」の相互作用を安定させ、気候変動を抑える
(参考:林野庁|森林の多面的な機能の評価について(日本学術会議の答申)林野庁| 2022年度森林吸収量の算定結果

※貨幣評価:日本学術会議の答申によって開示されており、森林の機能が年間でもたらす金銭的価値を表す

土砂災害の防止・土壌の保全

森林の下層植生※や落枝・落葉が地表を覆うことにより、侵食を防止でき、さらに樹木が根を地中に張ると、落石・土石流などの自然災害発生を食い止められます。

※下層植生:森林で生育する高木林の下に生える低木層や草本層など、背の低い植物群

また、森林の木々が茂ると、雪崩が起こりにくくなり、防風・防砂・防雪・防潮の効果も発揮します。

地球環境への効果日本の森林が持つ貨幣評価
地表面の侵食防止【貨幣評価】28兆2,565億円/年
土壌表層の崩壊防止【貨幣評価】8兆4,421億円/年
(参考:林野庁|森林の多面的な機能の評価について(日本学術会議の答申)

水害の抑制・水源の涵養機能

近年、道路をアスファルトやコンクリートで覆われた街で都市型洪水が増えて問題になっていますが、森林では、土壌が雨水・雪解け水を貯留し、河川へ流れ込む水量を平準化し、洪水の発生リスクを軽減しています。

また、雨水などが森林の土壌で濾過されて、水質が浄化される涵養(かんよう)機能がある点もポイントです。

これら森林の水に関わる役割は、降水量が多い日本にとって欠かせない機能といえます。

地球環境への効果日本の森林が持つ貨幣評価
洪水の緩和【貨幣評価】6兆4,686億円/年
水資源貯留【貨幣評価】8兆7,407億円/年
水質浄化【貨幣評価】14兆6,361億円/年
(参考:林野庁|森林の多面的な機能の評価について(日本学術会議の答申)

快適な環境の形成

森林は、私たちの生活を快適にする役割もあります。

  • 蒸発散作用※により、気温を安定させて、夏の暑さ・冬の寒さを軽減する
  • 心地よい木陰をつくる
  • 樹木の葉が、大気中の有害物質を吸収・分解したり、粉塵を取り除いたりすることにより、浄化される
  • 樹木が、騒音をブロックし、音の影響を軽減できる
  • スキー場・キャンプ場などのアメニティを形成する
  • 都市部に森林を増やすことで、植物の蒸散作用によって地表面温度の上昇を抑制し、ヒートアイランド減少の軽減につながる

※蒸発散作用:地表などからの水の「蒸発」と、植物の葉にある細かい気孔からの水の「蒸散」により、大気中へ水蒸気が移動して、気温を安定させる

保健・レクリエーション機能

森林には、物理的な役割に加えて、人々の身体や心理面にもたらす働きもあります。

  • 療養(リハビリテーション)
  • 保養(休養・休息・リフレッシュ・散策・森林浴)
  • レクリエーション(行楽・スポーツ・つりなど)

これらに加えて、森林歩行・森林座観によるリラックス効果やストレス軽減効果、生体調整効果による血圧安定効果も、実験によって明らかになってきています。

※生体調整効果:生物の生理的状態を「本来あるべき状態」に整える効果

日本学術会議の試算では、森林の保険・レクリエーション機能による貨幣評価は、2兆2,546億円/年にも上り、近年は日本の気候を生かしたスキーリゾートが世界的に注目を集めており、大きな経済効果を生んでいます。

文化的な機能

日本は古くから人々の暮らしと森林は密接に関わり合っていて、固有の文化形成に影響を与えていると言っても間違いありません。

  • 日本ならではの田園風景など景観の形成(ランドスケープ)
  • 風致(趣き・味わい)の形成
  • 生産や労働体験、自然との触れ合いを通じた学習・教育
  • 芸術へのインスピレーション
  • 宗教・祭礼(自然崇拝・山岳信仰)

近年は、自治体や企業が様々な木育(もくいく)イベントを開催し、木材や木製品を通じて、森林がつくる文化への理解を深めるための活動がすすめられています。

物質生産機能

森林の樹木は、様々なものに加工されて国内外に販売され、日本に経済的価値を与えています。

森林の物質生産機能における貨幣評価は、6,700億円/年にも上るとされており、日本経済を支える重要なパーツです。

森林が生産する物質には、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 木材(燃料・建材・木製品原料・製紙パルプ原料)
  • 食糧(きのこなど)
  • 肥料
  • 飼料
  • 薬品その他の工業原料
  • 緑化材料
  • 観賞用植物
  • 工芸材料
ポイント
日本の森林がもたらす貨幣価値は総額で「約70兆円」で、これを国内の森林面積2,502万haで割ると、「279.8万円/ha」となり、100m×100mの森林にこれほどの価値をもたらします。

これに加えて、貨幣評価できない「生物多様性の保全」や「快適環境の形成」、「保健」、「文化・レクリエーション」、「物質生産機能」を合わせると、森林が私たちの生活にもたらす働きは計り知れません。


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森林が「減る・なくなる」とどうなるか

森林がなくなる・減るとどうなるか

日本は、その国土の約70%を森林が占める世界でも貴重な国で、森林による恩恵をたくさん受けています。

しかし、世界では2015年以降に毎年約10万k㎡が失われており、1週間ごとに東京都とほぼ同じ面積がなくなっているのが現実です。

仮に、このまま森林が減り続けると、以下のような問題が発生すると推測されています。

地球温暖化の加速・異常気象

森林の樹木は成長する過程で光合成して、多くのCO2を吸収します。

しかし、一部の国では樹木が乱伐され、森林減少による温室効果ガス排出量は、世界全体における排出量の約20%を占めているのが現実です。

つまり、このまま森林面積が減少し続けると、地球温暖化を加速させる可能性があります。

また、近年世界中で報告されている大雨や干ばつも、森林現象が一因と言われており、私たちの生活を脅かしかねません。

生物種の消失

地球全体では、日々600万haもの森林が減少し、熱帯林では毎日100種の動植物が消失していると言われています。

森林は、野生生物種の半数以上が暮らす貴重な場所であり、森林の減少や消失は、確実に動植物の絶滅を早めてしまう恐れがあるのです。

ある種の動植物が絶滅すると、それを食物としている別の種も生存が危ぶまれる可能性も危惧されます。

経済的損失

森林は、木材や農作物を生み出し、森林資源に頼って生活している人は世界全体で2億人以上にもなると試算されています。

南米やアフリカ大陸、東南アジアなどでは、生活のために無計画な森林伐採が行われていますが、植林スピードがそれに追いつかないと、数十年で森林面積が大幅に減る可能性は否めません。

森林面積が減ると、そこから資源を確保できず、国によっては大きな経済的損失につながります。

新たな病原菌の脅威

まだ記憶に新しい新型コロナウイルスなど、動物を感染媒体とする病原菌は、森林面積が減ることにより感染拡大のリスクが高まると言われています。

なぜなら、森を追われた野生動物が街に出てきて人やペット、家畜などと接触するタイミングが増えるためです。

人の生活と隔離された森林で暮らす野生動物の体内には、まだ発見されていないウイルスや細菌が潜んでいる可能性があり、それが人に伝播される過程で変異して、一気に社会で広まることも推測できます。

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日本の森林は減少していないが「放置林・高齢化森林」の増加が問題に

日本の森林は減少していないが「放置林・老齢化した森林」の増加が問題に

世界では森林面積の減少が大きな問題として取り上げられていますが、日本の森林面積は1966年から2022年までほとんど変化はありません。

林野庁の公表データによると、50年以上もの間、国内の人工林と天然林を合わせた総森林面積は「2,500万ha前後(国土の66〜67%)」を保っています。

しかし、近年問題になっているのが、管理されずに放置される森林と齡級※が21年生を超える老齢化した森林の増加です。

※齡級:樹齢を5年ごとに区切った階級で、植林した年を1年生とし、6年生から10年生までを「2齢級」と表記する

放置林

日本においては、1,000万haが人の手によって植林・伐採される人工林で、その人工林に放置されて荒廃が進む「放置林」が増えており、総面積は最大で「約23万ha」とも言われています。

林野庁では「放置林」という言葉は使っていませんが、以下のような森林の総称としてニュースなどで用いられます。

  • 所有者不明林(持ち主の死亡などにより、法的な所有者が誰か分からなくなり放置されている森林)
  • 不在村所有者森林(所有者が森林のあるエリアから離れた場所に住んでいて、管理が行き届いていない森林)
  • 無管理森林(所有者の高齢化や人手不足により、管理が行き届いていない森林)

日本の人工林では、総面積の2/3において適切に森林経営できておらず、管理が不十分になっている恐れがあるとも言われており、地籍調査での登記簿上の所有者不明土地における森林(林地)が占める割合は28.2%にも上ります。

さらに恐ろしいことに、内閣府の調査では、森林所有者の80%程度が今後の森林経営に消極的で、その70%は樹木の伐採を考えていないという結果になりました。

このまま放置林が増え続けると、木材に適した樹齢の樹木がそのままにされ、倒木や地滑りなどの自然災害につながる可能性があります。

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高齢化森林

林野庁の調査によると、国内の森林面積は50年以上ほとんど変わっていないにもかかわらず、農地・街路樹を除く森林蓄積量※は1966年〜2022年で「約3倍」にも増えました。

※森林蓄積量:森林に生えている樹木(幹)の総体積で、森林資源の総量を表す

つまり、日本では森林の木が切られずにそのまま残っているということです。

国内の森林で10齢級(林齢46〜50年)以上の老齢化した人工林は、総人工林面積の50%を超えているとされています。

日本全国の人工林・天然林の齡級別面積
林野庁|樹種別齢級別面積(令和4年3月31日現在)のデータを基に弊社にて作成)

木が伐採されていないことは一見、森林保全につながると思われますが、老齢化した木が切られずにそのまま残ると、以下のようなデメリットをもたらします。

  • 幹が太くなり過ぎて、伐採や製材にかかるコストが高くなり、採算が合わない
  • 木の成長が止まると、CO2吸収量が減る

そのため、一般的には伐採に適した樹齢は「7〜8齡級(植林から35〜40年)」とされています。

ちなみに、「10〜20齡級(植林から50〜100年)」の間は光合成のより多くのCO2を吸収し、それを超えると年数を追うごとに炭素固定量が減少するため、今後は日本の森林による地球温暖化抑制効果は薄れていくのが現実です。

森林の持続可能性を高める方法

森林の持続可能性を高める方法

日本は国土の2/3を森林が占める貴重な国で、発展途上国で見られる森林の無計画な乱伐や森林火災はそれほど深刻ではありません。

しかし、放置林や老齢化森林は年々増えており、その持続可能性は低くなっていると言わざるを得ません。

この状況を打破するために、林野庁では以下の取り組みを実施しています。

  • 林業従事者の高齢化・若者離れを解決するための「人材育成」
  • 少ない人数で効率的に森林管理できるようにするための「林業のDX※(スマート林業の推進)」
  • 中大規模建築物の「木造化・内装木質化推進」
  • 「国産材・地域材の利用促進」(木材自給率の向上に向けた取り組み)
  • 森林経営の過程で発生する「間伐材の有効活用」(木質燃料・建材としての利用)
  • 成長が早くCO2吸収力が高い「小径材の利用」(建材としての利用)

※DX:Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称で、デジタル技術の導入により業務プロセスの生産性・収益性を高めるための取り組みを指し、林業においては森林情報のクラウドデータ管理や、ドローンを用いた森林調査などの技術開発が進められている

ポイント
『恩加島木材工業株式会社』は、国内外から良質な突板を仕入れて突板化粧板に加工する建材メーカーです。

国産材・地域材のラインナップを多数取り揃え、林業の活性化につながる間伐材・小径材の利用にも、積極的に取り組んでいます。

「森林保護や林業サポートに貢献できる建築材料を探している」という方は、ぜひ恩加島木材までお気軽にご相談ください。


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森林保護・林業サポートに貢献できる恩加島木材の「突板貼り化粧板シリーズ」

「内装木質化」におすすめの恩加島木材「突板貼り化粧板シリーズ」

森林・林業の持続可能性を高める方法として、内装に木質建材を採用する事例が増えています。

恩加島木材は、国内外から多種多様な突板を仕入れ、天然木の風合いを残した高品質な「突板化粧板」を製造している建材メーカーです。

突板化粧板とは、突板と呼ばれる天然木を0.2〜0.3mmの薄いシート状にスライスした素材を合板などに接着したパネル材で、内装仕上げや家具・建具の材料として使用されています。

表面材と基材

恩加島木材が自信を持って提供する「突板化粧板の強み」は以下の点です。

  • 無垢材と同様の「ナチュラルな見た目と質感に仕上がる」
  • 工業製品なので、無垢材よりも「品質と寸法の安定性が高い」
  • 無垢材よりも軽量化が可能で、「施工効率性アップにつながる」
  • 無垢材よりも温度や湿度の環境変化による「変形リスクが少ない」
  • 希少性があり高価な樹種でも、「無垢材より安価で安定して材料を入手しやすい」
  • 原木1本から取れる突板面積は無垢板材よりも広いため、「同じ風合いを大量入手しやすい」
  • UV塗装などの特殊塗装により「表面の耐摩耗性・耐汚性が高い」
  • 通常の化粧板と同じ突板を用いた「不燃・難燃材料認定取得済み化粧板」もあり、内装制限など防火規定の対象部分と非対象部分の仕上げを揃えられる

さらに弊社では、国産材や地域材、間伐材、成長の早い小径材を積極的に活用し、「人工突板」の開発・製造にも努めるなど、森林活性やカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを行っています。

恩加島木材工業の突板化粧板シリーズ
● 0.5mm厚突板による立体感と特殊UV塗装で耐久性と抗菌性能を付与した日本初上陸のプロダクト「KDパネル:突板化粧合板

● 豊富な樹種・木目とUV塗装も選べる「PANESSE(パネッセ):非不燃・不燃天然木練付突板化粧板

● 重い・割れやすい・高コスト・ビスが効かないなどの懸念点を解消した「不燃突板複合板

● 国内初・組み立てた状態で準不燃認定を取得した「リブパネル

● 国内初・孔を開けた状態で不燃認定を取得した「有孔ボード


▶︎おすすめコラム:突板製品はこうして生まれる。森から現場までのプロセスは?生産工程や恩加島木材の強みを紹介


まとめ

森林には、地球環境・経済発展・文化継承など多面的な役割を持ち、今後減少・消失すれば、私たちの生活に大きな影響をもたらします。

日本では、適切に管理されていない「放置林」や、伐採に適した時期を過ぎてしまった「老齢化森林」が増えており、このままでは倒木・地滑りなどの自然災害や、森林のCO2吸収効果の低下につながりかねません。

森林の持続可能性を高めるためには、林業の変革に加えて、建築物の木造化・内装木質化が有効です。

恩加島木材は、高品質&レパートリー豊富で、環境に配慮した「突板化粧板」を製造販売しております。

「思い通りのデザインを実現したい」という方は、恩加島木材の突板製品をご採用ください。