【森林を守るためにできること】国・企業の取り組みと関連法令について

【森林を守るためにできること】国・企業の取り組みと関連法令について

世界的にSDGsや脱炭素の動きが活発になる中、いくつもの国や企業が取り組んでいるのが「森林保護」です。

そこで今回は、森林保護の重要性や現在の問題点、国・企業が行う森林を守るための具体的な取り組みについて詳しく解説します。

森林保護に繋がるおすすめの建築材料も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

このコラムのポイント
● 森林を守ることは、地球環境保護や生物の生育環境保全、自然災害抑制につながります。

● 世界と日本では森林の減少や衰退をもたらす要因が異なります。

● 森林を守るためには、国や自治体の取り組みに加えて、企業の意識改革や具体的な取り組みが欠かせません。

● 恩加島木材は、高品質で施工性・デザイン性の高い木質内装建材の開発製造や国産材利用を通じて、森林保護に努めています。


森林が担う役割と保護の重要性

森林が担う役割と保護の重要性

森林保護と聞くと、“環境に優しい”など漠然としたイメージが浮かびますが、森は私たちの生活と密接な関わりのある役割を果たしています。

地球温暖化防止

木々は成長の過程で二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。

また、光合成の過程で吸収した二酸化炭素を有機化合物として抱え込んで固定するため、森林の活性化は地球温暖化防止において欠かせません。

林野庁の調べによると、1世帯の年間二酸化炭素総排出量(約3,700kg)は、樹齢40年程度の杉420本が年間で吸収する二酸化炭素と同等とされています。(参考:林野庁|森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?

地下水の浄化

木々の根が張り巡っている森林の土は、雨水を抱え込んで河川へ流れる水量を平準化して洪水を防いぎます。

また、雨水が土を通過する過程で窒素やリンなどの有害物質が浄化され、カリウムやカルシウムなどのミネラル分が加わるという調査結果も出ていることから、森林は地下水の浄化作用ももたらすのです。(参考:林野庁|水源涵養機能

森林の持つこれらの機能は、水源涵養機能と呼ばれています。

多様生物の保護

日本の森林には、約200種の鳥類と2万種の昆虫類、その他きのこなどの菌類が生育しています。

落ち葉や枝、寿命を終えた木が腐食して、それが様々な生物が成長するための栄養源になっているのです。

また、森林が浄化したミネラルを含む地下水が、河川、ひいては海へ流れ出て河川生態系や沿岸生態系を保全していることも分かっています。(参考:林野庁|生物多様性保全

自然災害の抑制

森林をまもることは、土砂災害や落石事故、雪崩などの自然災害の抑制につながります。

木々の下に生育する低木・草花や、落ち葉・枯れ枝が地表を覆うことで、風化スピードを抑えられるためです。

また、健康な木が土壌層の下にある基岩層まで根を伸ばすと、地滑りのリスクを大幅に減らせます。

森林の自然災害抑制機能
(引用:林野庁|森林整備の動向(1)

近年、大雨に伴う地滑りのニュースを度々見かけますが、これは間伐などの森林管理が行き届かずに木の成長が不活性化していることが一因です。

地表の保護に加えて、沿岸地域では森林が防砂林や防風林、防潮林の役割も果たしていたり、豪雪地域では森林が雪崩を食い止めたりと、森林は幅広く私たちの生活を守ってくれているのです。(参考:林野庁|未来へつなぐ防風保安林 ~森林づくりの方法~)

ポイント
森林には「文化継承」や「燃料生産」、「保養・リラックス効果」などの機能もあります。

そのため、“木は切らない方がいい”と思われがちですが、森林活性にはある程度の伐採が欠かせません。


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世界の森林が抱える問題点と課題

日本の森林が抱える問題点と課題

森林が担う役割は大きく、地球環境や人間を含む多種多様な生物の生育環境保全にとって欠かせない存在です。

ところが、世界では森林面積の減少が続いています。

地球全体の森林面積は約40.3億ヘクタール(全陸地面積の30%程度)ですが、1960年から2019年までの間で日本列島2つ分程度の約2%が減少したというデータも出ています。(参考:国立研究開発法人森林総合研究所|過去60年で世界の森林面積は日本列島2つ分消失

では、その主な原因を詳しく解説します。

無計画な森林伐採

ブラジル、インドネシア、ナイジェリアなどでは近年大幅な森林減少が見られており、その原因は農地転用や焼畑農業、薪やペレットなど燃料用木材の過剰生産が原因とされています。(参考:環境省|国際的な森林保全対策

焼畑農業によって失われた森林面積は地球の森林面積約10%ほどに相当し、深刻な問題です。

また、アフリカでは木材需要の90%以上が燃料であることから、やむを得ず森林伐採している現状も無視できません。(参考:環境省|世界の森林の現状 森林減少・劣化と違法伐採)

干ばつ・森林火災の増加

焼畑農業をそれほど行なっておらず木質燃料に頼っていないオーストラリアでも森林減少が進んでいます。

その原因は年々深刻化している干ばつによる森林火災とされており、2000〜2010年のたった10年間でオーストラリアでは平均で年間約56万ヘクタールもの森林が失われています。(参考:環境省|世界の森林の現状 森林減少・劣化と違法伐採)

違法伐採の増加

近年、世界で問題視されているのが違法伐採の増加です。

違法伐採とは、各国の法令に違反して利益最優先で森林が伐採されている問題で、森林減少の大きな要因となっているだけではなく、違法伐採材は低コストで流通するため、法令を遵守する林業・製材業への経済的なダメージは計り知れません。

世界の森林伐採における15%以上が違法伐採であるとされていることから、世界各国で法整備が進んでいます。(参考:林野庁|違法伐採対策に関する各国の動向)

日本の森林が抱える問題点と課題

日本の森林が抱える問題点と課題

日本は、国土の2/3を森林が占める世界でも有数の“森林大国”であり、古くから林業・製材業、木材を多く消費する建設業が経済を支えてきました。

また、降雨量や降雪量の多い気候特性であることから、森林火災のリスクはそれほど高くないとされています。(参考:林野庁|日本では山火事はどの位発生しているの?

世界で問題となっている違法伐採は日本でも発生していますが、2023年に警察が介入した大規模な盗伐は19件にとどまっています。(参考:林野庁|民有林の無断伐採に係る都道府県調査結果(令和5年)について

しかし、近年は日本でも森林衰退が始まりつつあります。

森林の劣化・森林蓄積量増加

森林は「伐採しないで守る方がいい」という訳ではありません。

木の「植林・間伐・収穫・利用」を繰り返すことで、森の“新陳代謝”が活性化して木々の成長をもたらすのです。

森林サイクル
(引用:林野庁|森林資源の循環利用を担う木材産業


このサイクルを森林循環と呼びますが、近年は広い面積を占めるスギ・ヒノキの人工森林を中心に、伐採に適した樹齢の木々が伐採されずに残っており高齢化した樹木が増えています。

(引用:林野庁|「森林資源の現況」について

高齢化した樹木は二酸化炭素吸収量が少なく、根が弱体化して地滑りなどの自然災害防止効果が失われてしまいます。

所有者不明林や放置林の増加

日本における森林のうち、林業を目的とした人工林はおよそ40%にも上ります。

人工林割合
(引用:林野庁|スギ・ヒノキ林に関するデータ

かつては大量の木材を産出していた人工林ですが、近年は所有者の代替わりや林業の低迷によって所有者不明林や管理されない放置林が増えています。

伐採後に再植林されていない森林や適切な間伐が実施されていない森林の面積は、3.9~22.9万ヘクタールほどに上るというデータもあるほどです。(参考:国土交通省|管理放棄地の現状と課題について

今後はさらに放置林は増え続けるとされています。

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林業の人材不足・高齢化

森林蓄積量や放置林の増加をもたらす最も大きな要因は、林業の人材不足と高齢化にあります。

1985年には約33万人もいた林業従事者は、2015年には約11万人にまで減少しており、全産業の平均年齢が46.9歳に対して、林業従事者の平均年齢は56.0歳と高齢化が顕著です。(参考:林野庁|林業の動向(4)

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国・自治体による「森林を守るための取り組み」例と関連法令

“木の内装”をプランへ取り入れる前に知っておくべきデメリット・注意点

日本でも深刻化する森林問題を打破するために、国や自治体ではさまざまな取り組みを行っています。

木材利用促進法の制定

木材利用促進法とは、2010年に制定された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を指し、当初はその対象を公共建築物に限定していました。

その後、2021年には「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」と名称が変更されて、すべての建築物まで対象が拡大しました。

木材利用促進法の中では、木材利用を進めるための「国・自治体が担う責務」と、「林業・木材産業事業者・国民の努力義務」が明記されています。(参考:林野庁|脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律

クリーンウッド法の制定

クリーンウッド法とは2017年に制定された法律で、木材関連事業者に対して取り扱う木材に違法性がないかや、合法伐採材であるかを確認することを義務付けています。

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森林環境税・森林環境贈与税の徴収

森林環境税と森林環境贈与税は、2019年に制定された「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」によって創設された税金で、森林の保全・発展のための財源を確保するために使われます。

(引用:林野庁|森林環境税及び森林環境譲与税|森林環境税・森林環境譲与税の仕組み

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森林経営管理制度の運用

森林経営管理制度は放置された森林を自治体が所有者から委託を受けて管理・整備・経営できるようにする制度で、森林運営の効率化・集約化によって、放置林増加抑制や維持コスト削減につながると期待されています。

森林経営管理制度
(引用:林野庁

自治体が森林運営に関与することで、自然を有効活用できる点もポイントです。

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エリートツリーやCLT・LVLの開発及び開発支援

木材利用促進法制定以降、非住宅分野や中大規模建築物を木造化・内装木質化する事例が増えています。

その流れをさらに加速させるために、国主導でエリートツリーやCLT、LVLの開発が進められているのです。

エリートツリー

成長が早く品質・形質が優れている個体(精英樹)のうち、特に優良なものを人工交配させたものを指し、森林循環の活性化や良質な木材の産出をもたらすと期待されています。(参考:林野庁|エリートツリーの開発・普及

CLT

Cross Laminated Timberの略称で、単板を繊維が直交するように積層接着したパネル材です。

主に壁や床の構造材として用いられ、近年はビルなど規模の大きい建築物へも採用されています。

LVL

Laminated Veneer Lumberの略称で、単板を繊維が平行になるように積層接着した木質建材です。

主に木造建築の柱や梁などの主要構造部へ使われ、CLTと同様に規模の大きな建築物への採用事例が増えています。(参考:林野庁|建築用木材の技術開発及び設計者等の育成の成果

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建築基準法改正による木材利用の促進

これまで、公共性の高い建築物や大規模建築物を木造にしたり内装へ木質建材を採用したりするためには、防火規定をクリアするハードルが高く、実現を断念するケースは少なくありませんでした。

しかし、中規模以上の建築物における木材利用をさらに推し進めるために、2025年4月に建築基準法が改正されました。

その中では、床面積3,000㎡を超える建築物を木造にする場合、柱や梁などの構造木材を“表し(あらわし)”にできるなどの規定変更が盛り込まれています。

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GX法の制定

GX法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)とは2023年に制定された法律で、脱炭素化と産業競争力の向上を両立させて経済成長に繋げることが制定の目的です。

※GX:Green Transformationの略称で、化石燃料の消費抑制や再生可能エネルギーへの転換を実現するための取り組み全般を指す。

法令の中では、民間企業へのGX投資を支援したり、カーボンプライシングによって企業からの二酸化炭素排出量を抑制したりする内容が含まれています。

※カーボンプライシング:企業などの二酸化炭素排出量に価格をつけて納税などに繋げ、排出削減を促す政策手法

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地域材利用を対象とした補助金制度

自治体によっては、その地域で育った木材(地域材)を使用する建築プロジェクトに対して補助金を支払う制度が実施されています。

(例:非住宅建築物における奈良県産材を使用した木造化支援事業東京都|木の街並み創出事業

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ポイント
恩加島木材は1947年に木材工業所として創業以来、国内外から良質な突板を仕入れて内装建材を製造しております。

国産材・地域材の利用や、間伐材を活用した人工突板の開発などに取り組んでおりますので、環境配慮型建築や森林保護に貢献できる建築を目指す方は、ぜひ弊社までご相談ください。




企業・民間団体でできる「森林を守るための取り組み」例

企業でできる「森林を守るための取り組み」

企業や民間団体でも森林を守るために積極的に取り組んでいる事例は少なくありません。

木育の実施

木育(もくいく)とは、木材や木製品に触れながら森林の重要性や文化・歴史を学ぶ活動で、教育機関だけではなく企業主体でワークショップなどが多く実施されています。(参考:林野庁|木育

自社所有建物の木造・木質化

自社ビルやオフィス、工場、店舗の構造や内装・家具に木材を積極的に採用し、環境保全やSDGsに対する取り組みを社会へアピールする企業が増えています。

国産材・地域材の利用

木造利用からさらに踏み込んで、自社が所有する建物へ国産材や地域材を利用する事例は少なくありません。

日本の森林活性化や地域産業の応援を後押しできることに加えて、建物利用者に愛されるなどのメリットをもたらします。

建物の木造・木質化や国産材・地域材の利用は、森林保護に直結する取り組みとして、多くの企業やプロジェクトへ採用されています。

ポイント
恩加島木材の内装建材は、樹種・サイズのレパートリーが豊富で、内装制限の対象範囲にもご採用いただける高品質な不燃材料も製造しております。




森林保護につながる「恩加島木材の突板化粧板」

森林保護につながる「恩加島木材の突板化粧板」

私たち“恩加島木材”は、良質な突板を用いて高品質な内装建材を製造しているメーカーです。

突板とは丸太を0.2〜0.3mmと薄いシート状にスライスした素材で、それを表面材として合板やMDF、不燃パネルなどの基材に接着することで様々な部位にご利用いただけます。

恩加島の突板内装建材の強みは以下の7点です。

  • 無垢材と同様のナチュラルな見た目と質感に仕上がる。
  • 無垢材よりも軽量化を実現でき、施工効率性アップにつながる。
  • 無垢材よりも温度や湿度環境変化による変形リスクが少ない。
  • 希少な樹種でも、無垢材よりコストを抑えて安定して材料を入手しやすい。
  • 原木1本から取れる突板面積は無垢板材よりも広いため、同じ風合いを大量入手しやすい。
  • 特殊塗装によって、表面の耐キズ性・耐汚性を高められ、日焼けによる変色も抑えられる。
  • 基材によっては防火材料認定を受けられるため、内装制限のある建築物にも採用しやすく、対象範囲とそうでない部分の仕上げを揃えられる。


“恩加島木材工業”は、1947年創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、内装の木質化と国産材利用促進に貢献できる木質建材を製造しております。

  • 豊富な樹種・木目とUV塗装も選べる「突板化粧板」
  • 曲面への施工に対応できる「突板シート」
  • 突板化粧板の表面に特殊加工を施した「テクスチャーボード」
  • 重い・割れやすい・高コスト・ビスが効かないなどの懸念点を解消した「不燃突板複合板」
  • 国内初・組み立てた状態で準不燃認定を取得した「リブパネル」
  • 国内初・孔を開けた状態で不燃認定を取得した「有孔ボード」


突板化粧板の製造から着色塗装・特殊塗装を全て自社工場で行うため、オリジナリティを表現できる木質建材をお探しの方は、ぜひ恩加島木材までご相談ください。

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まとめ

「森林を守るために何ができるか」を考える際は、まず世界や日本の森林が抱える問題を知ることから始めてみましょう。

森の担う役割や生物にもたらすメリットを理解することも大切です。

日本では森林保護を目的とした木材利用促進に対するさまざまな取り組みが実施されていますが、その効果を発揮するためには企業で検討すべき取り組みもあります。

恩加島木材では、高品質な木質内装建材の製造・開発や国産材・地域材の利用を通して、森林保護に努めています。

「環境に配慮した建物にしたい」「脱炭素のコンセプトを強く打ち出した設計プランにしたい」という方は、高品質でレパートリー豊富な恩加島木材の突板製品をご検討ください。