林業・森林資源を守る“エリートツリー”。基礎知識からメリット・デメリットについて解説

皆さんは、「エリートツリー」という言葉を聞いたことはありますか?

実は、林野庁を初めとした官民の団体が何年も前から取り組んでいる事業です。

日本の林業・森林資源を守る可能性を秘めているものの、一般の方への認知度はまだまだ高くありません。

そこで、今回は「エリートツリー」についての基礎知識から、メリット・デメリットまで詳しくお話しします。

「地球環境に配慮した木材を取り入れたい」「SDGsへの企業活動を拡大したい」とお考えの方は、是非参考にしてください。

このコラムのポイント
●エリートツリーとは、通常の同品種木と比べて、成長が速くCO2吸収量の多い優れた個体を指します。
●建築の“木質化”が進むことで、より一層エリートツリーの開発が進み、高品質の木材が短サイクルで市場に出回ることが期待できます。
●恩加島木材は、環境に配慮しつつ国内外から多数の高品質の天然木を仕入れ、常にお客様のニーズに応えられるよう努めております。




“エリートツリー”とは「昔から開発を進めてきた試み」

「エリートツリー」とは、人工造森林において、飛び抜けて成長が良く形質が優れている個体「精英樹」のうち、優良なもの同士を人工交配によりかけ合わせ、その中からさらに優れた個体を選んだもののことです。

具体的には、以下の条件をクリアして農林水産大臣から認定を受けた個体を指します。

  • 標準な品種と比較して、成長が1.5倍以上
  • 製材した際の剛性が平均以上
  • 標準な品種と比較して成長過程のCO2吸収量が、1.5倍以上
  • 標準な品種と比較して花粉量が半分以下
  • 幹が真っ直ぐ
エリートツリーと従来種の成長比較
(引用:森林研究・整備機構 森林総合研究所林木育種センター


実はその歴史は古く、昭和29年に始まった「精英樹選抜育種事業」に由来します。

精英樹選抜
(昭和29〜33年頃)

「林木育種戦略」に基づき、製材を目的として以下の条件を満たす“(第一世代)精英樹”が約9,100本選抜されました。

  • 成長が早いこと
  • 単位面積あたりの収穫量が多いこと
  • 幹がまっすぐであること
  • 病気や虫害がないこと

採種園・採穂園整備
(昭和32年〜)

林木育種場が”継ぎ木”で増やした精英樹の苗(原種苗)を元に、都道府県が採種園・採穂園を造成しました。

精英樹検定林設定
(昭和39年〜)

検定林の定期調査結果から、より優秀な原種苗との入れ替えを随時実施したり、成長の特性を評価しました。評価結果は採種園の改良や品種開発、第2世代精英樹を育成するための交配樹の選定に活用されます。

精英樹間F1の人工交配
(昭和59〜平成19年)

計画当初に選定された精英樹から、第2世代の交配母樹・F1を選定し、約 9,100通りの人工交配を実施しました。結果的に、21万個体の精英樹F1が育てられています。

精英樹F1の育種集団林造成
(昭和59年〜)

立地差の影響を除いた条件で精英樹を評価するために、精英樹 F1の育種集団林を造成しました。そこを定期的に調査することで、成長等の特性を見極めます。

エリートツリー原種の配布開始
(平成24年)

精英樹の中でも特に優秀な杉の苗250本が、林木育種センターから茨城県に配布されました。これが昭和29年から約60年にわたって研究開発されてきた「エリートツリー」の第一陣です。

「エリートツリー」(第 2 世代の精英樹)の開発も進行中



エリートツリーの交配・育成は、北米やオセアニア諸国で先進的に行われており、その目標はずばり「生産コストの低減」です。

林業・製材業が盛んな国では、森林経営を大規模に行なっている割合が多く、投資への意欲が強い傾向があります。

そのため、森林所有者はより効率的に樹木を育てることへの投資ををいとわず、種苗生産業者からより成長スピードが速く良質な原種を高値で購入するのが一般的です。

日本でも、エリートツリーが増えれば増えるほど、高い苗木を買っても成長サイクルが短く直ぐに市場へ出せるため、利益が増えていくはずです。

オーストラリア種子センターの標語は“Good seed does not cost, It pays. (優良種子は高くつかない。儲かる)”。

森林資源が豊富で林業・製材業のポテンシャルが高い日本においても、この考えが浸透・定着することで、大きな経済効果が生み出されると期待されています。

これまでは、林木育種センターや各都道府県が開発・生産を進めていましたが、 民間活力導入(「特定増殖事業」)も行われており、今後一気にエリートツリーの普及が進むことは容易に想像できるでしょう。

林野庁は、2019年の苗木需要本数7,000万本の内、約3%がエリートツリーであるとしており、2030年にはその割合を30%に、2050年までには90%にする計画です。

〈参考ページ〉

材木育種センター|精英樹選抜育種に関する取り組み

日本製紙株式会社|林業の救世主「エリートツリー」普及の取り組み



“エリートツリー”のメリット・デメリットは?

環境

エリートツリーは同品種の中でも成長が速い点が一番の特徴ですが、それによってもたらされるメリットはいくつもあります。

一方で、現状の問題点があるのも無視できません。

では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

メリット

「成長が速い・CO2吸収量が多い・花粉量が少ない・幹が通直」という優れた特性を持つエリートツリーが増えることで、高品質の木材が早いサイクルで市場に出回ることになります。

つまり、植林から成熟期までの期間が短いため、作業量低減や森林維持コストの削減につながることが期待されているのです。

具体的には、初期成長が早いため、手間のかかる下刈り(木の生育を妨げる草木を刈り払う作業)の回数を減らせる点や、伐採時期を50年から30年へ短縮できる点が挙げられます。

また、成長過程でCO2の吸収量が多いということは、“地球温暖化対策”としても有効で、「農林水産省地球温暖化対策計画」では、森林吸収源対策としてエリートツリーの開発や普及が盛り込まれています。

デメリット

現時点では、まだまだ原種の母樹本数が少ないため、多くの需要をまかなうことはできません。

また、出荷本数が限られ、普及率も低いことから、価格が高いのも事実です。

しかし、今後は採穂園の整備や研究開発が進むことによって、苗木のエリートツリー率が高まり、販売コストが削減されていくことが期待できます。

ただし、理解しておかなくてはいけないのが、エリートツリーは成長が早いことから、樹齢100年を超えるような銘木というよりも、並材の生産に適した樹木であるということです。

ただし、集積材・集成材の原料としては問題なく利用できるため、近年の建築業界ニーズとも合致しています。

並材を短期間で製材できることが重要であるということです。

〈参考ページ〉

林野庁|エリートツリーから多様な林業の可能性を考える




エリートツリーの普及促進には“建築の木質化”がポイント

環境

日本が世界に誇る天然資源である“森林”をより活性化し、ひいては林業・製材業を盛り上げることが期待されている「エリートツリー」。

その研究開発や普及を促進させるためには、より一層「建築の木質化」が重要な鍵を握っています。

特に、住宅だけではなく中規模以上の公共施設においては、内装の木質化が進んでいます。

私たち“恩加島木材”は、1947年創業以来培った知識・経験と、最新の技術を掛け合わせて、お客様にご満足いただける商品をご提供しています。

その中でも、最近私たちが注力しているのが「人工突板」です。

短期間で成長する植林樹木を利用した「人工突板」の開発・製造も進めており、並材からでも美しい木目を持つ突板製品を作り出すことができます。

ポイント
恩加島木材は、間伐材を利用した”人工突板”の開発・製造を進めています。


リーズナブルで高品質な突板製品を建築の設計デザインに取り入れたいとお考えの方は、ぜひ当社製品のご採用をご検討ください。

〈関連コラム〉

恩加島木材工業株式会社|コラム|今“内装の木質化”が注目されている訳とは? その効果や取り入れるべき建築物について徹底解説

恩加島木材工業株式会社|コラム|ウッドインテリアを取り入れて長く愛される建物に。 メリット・おすすめデザインや人気の樹種を紹介

恩加島木材工業株式会社|コラム|“人工突板”は天然木由来の建材。基礎知識やウッドショックとの関連性について解説




恩加島木材は“内装の木質化”に関わる高品質な製品を取り扱っています

私たち“恩加島木材”は、国内外から高品質の突板を仕入れ、熟練した“職人技”で美しい化粧板に仕上げています。

常時40種・400束以上もの天然木突板を在庫しており、化粧板だけではなく、フローリング材、有孔ボード、リブパネル、ルーバーなど多彩な商品ラインナップをご用意しています。

貼り加工から塗装加工まで全て自社工場で行なっているため、数量によってはオーダー品の製造も可能です。

“木”を取り入れた温かみのあるインテリアを実現したい方は、ぜひ当社製品をご検討ください。

〈関連ページ〉

恩加島木材工業株式会社|製品案内

恩加島木材工業株式会社|取扱樹種

〈関連コラム〉

恩加島木材工業株式会社|コラム|突板製品はこうして生まれる。森から現場までのプロセスは?生産工程や恩加島木材の強みを紹介

恩加島木材工業株式会社|コラム|恩加島木材の豊富な突板化粧板ラインナップ・厚さと基材の種類を紹介






恩加島木材の取り組みや今後の目標

私たち“恩加島木材”は、地球環境や森林維持のために様々な取り組みを行っております。

再生エネルギーの導入

自社工場への太陽光発電システムおよび蓄電池の導入を目指しています。
(2023年、本格導入予定)

持続可能な製品の開発製造

植林木を利用した突板の開発を進めています。

地産材の積極的利用

日本の貴重な資源である“森林”、そして林業・製材業を守るため、原産地を日本国内ならず地域を限定した樹種を積極的に取り扱っています。

地産材の納入実績
JR北陸新幹線・長野駅 コンコース内天井(長野県産杉利用)
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)


〈関連ページ〉

恩加島木材工業株式会社|製品案内|原産地(日本)

〈関連コラム〉

恩加島木材工業株式会社|コラム|今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説


“WOOD COLLECTION 2023”に出展します

モクコレ2023

“恩加島木材工業”は、2023年1月に開催される「WOOD COLLECTION 2023」に出展します。

このイベントは、国産木材の普及や価値を見出してもらうことを目的とており、日本全国から集まった企業が、木材製品や技術の展示を行います。

「“木”を生かした設計・デザインをしたい」「木製品の最新情報やトレンドを知りたい」という方は、ぜひご来場ください。

〈関連ページ〉
WOOD COLLECTION 2023(公式ページ)




まとめ|エリートツリー普及は建築コスト削減につながります

エリートツリーは、同品種の中でも特に成長が速く、真っ直ぐに成長するのが特徴です。

まだまだ普及しているとは言い難いですが、今後より研究開発が進むことで、建築資材として活用される未来も近いでしょう。

エリートツリーは短いサイクルで伐採期を迎えるため、低コストで高品質な木材が市場に出回ることとなります。

建築の“木質化”が広まれば、よりエリートツリー開発が進むことが期待できるでしょう。

そこで“恩加島木材”がおすすめするのが、「突板製品」です。

“恩加島木材”は長年培った経験と知識をもとに、みなさんの設計デザインをお手伝いさせていただいております。

製品は、天然木突板を使った化粧板やフローリング材、ルーバー、有孔ボードなど多岐にわたっているため、空間のトータルコーディネートも可能です。

「環境に配慮した製品を取り入れたい」「統一性のある洗練されたデザインを実現させたい」とお考えの方は、ぜひに一度恩加島木材の突板製品をご検討ください。

〈関連ページ〉
恩加島木材工業株式会社|納入実績


日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”

難燃_不燃複合板

建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。

天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ6・9mm)を貼り合わせた材料です。

しかし、今までの不燃突板化粧板には施工上の問題点がありました。

  • 重い
  • 割れやすい
  • 高コスト
  • ビスが効かない


それらの問題を解決したのが、恩加島木材の不燃突板複合板」です。

天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。
※幅290mmまでは本実加工も可能です。

日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。

不燃突板複合板大臣認定取得


一口メモ
世界的に著名な建築家・隈研吾氏が主宰する隈研吾建築都市設計事務所が設計した「和歌山県・有和中学校」新校舎に当社製品が採用されています。





恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします

「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?

恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。

随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

〈関連ページ〉
カタログ請求や見積依頼、お打合せ依頼等は下記ページよりお問い合わせください。
恩加島工業株式会社|お問い合わせ