今“内装の木質化”が注目されている訳とは? その効果や取り入れるべき建築物について徹底解説

皆さんはここ数年、「内装の木質化」が注目されていることを知っていますか?新聞などでも取り上げられているため、一度は耳にしたことがある方も多いかもしれません。しかし、まだまだ具体的な内容を知らない方も少なくないでしょう。

そこで、今回は「内装の木質化」について、もたらされる効果や注意点、関連する助成制度についてなど詳しく解説します。ぜひ、内装デザインや設計の参考にしてください

このコラムのポイント
・内装の木質化には、多方面でのメリットが立証されている。
・インテリアに“木”を取り入れる際には、知っておかなくてはいけない注意点がある。
・もたらせれる効果を活かして、様々な用途の施設において内装の木質化が進んでいる。




国が推し進める「内装木質化」とは?どうして注目されているの?

日本は、先進国の中でも国土に対する森林の割合が多い「森林大国」です。平成29年のデータによると、なんと国土の約2/3が森林で占められています。

引用:森林・林業学習館


第二次世界大戦後住宅を急ピッチで住宅を再興するために大量の木材が消費され、その後1955年頃一斉に植林されたものが、現存する森林の大半を占めています。そのため、今まさに森林の樹木は木材として利用するのに適した成長を遂げました。しかし残念ながら、現状は携わる人の高齢化が進んで人員不足が深刻化していることもあって、林業や製材業は衰退の一途をたどっています。

ところが、昨今の世界的な「脱炭素化」や「温室効果ガス削減」、新型コロナウイルス感染拡大に伴うウッドショックなどの影響で、今再び国内産や地産材への注目が高まってきています。そんな状況の中、国が建築業界における国産材・地産材の利用を推進する目的は、以下の3つです。

  • 地球環境への負荷軽減
  • 林業や木材産業の活性化
  • 建築資材の安定供給


国が行っているいくつかの取り組みの中の一つが、「内装の木質化」です。2021年10月に改正された木材利用促進法によって、今までは公共施設に限られていた対象が住宅や民間施設にまで広がり、インテリアに木材を積極的に取り入れる動きが活発化しています。

一口メモ
法律の正式名称も、発足当時(2011年)の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」から「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改められ、より一層建築物全てに対する木材利用促進が整備されました。

〈関連コラム〉
下記コラムでは、国産材・地産材についてや、ウッドショックについて詳しく解説しています。是非合わせてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|コラム|今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説
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内装の木質化がもたらす効果とは?

では、具体的には内装を木質化することでどのような効果が得られるのでしょうか?近年、国始動のもと様々な研究が行われ、木質化の科学的検証が進んでいます。そこで、ここではその一部を紹介します。

その① 心理的・身体的効果

木材には、私たち人間の心と体に様々な効果をもたらすと立証されています。

  • リラックス効果、疲労感の緩和
  • 血圧の低下
  • 免疫力アップ
  • 良質な睡眠を促す


まず、木材の発する香りは、リラックス効果があると言われています。特に、杉材の香りは人間の唾液分泌を促す効果があり、ストレス軽減や血圧の低下をもたらすというデータも出ています。さらに、精神的に負担の多い作業を終えた後に、木質化空間に入ると、「緊張」「疲労」「混乱」などの指数が低下したという結果もあることから、オフィスの内装にも多くの木材が取り入れられ始めています。

そして、ヒノキの匂い成分が人間の免疫細胞のうちの一つ「ナチュラルキラー(NK)細胞」を活性化させる可能性があり、同時にストレス指数を示す尿中アドレナリンが低下したという研究結果も出ていることから、木質空間は人々の心身を正常に保つ作用があると言われています。また、働く人に日常の睡眠と住環境についてアンケートを実施したところ、木材や木質家具、木製ドアなどが多い環境ほど、不眠症になる人が少ないという結果も得られました。


その② 衛生・安全面での効果

木材の性質上、下記のような衛生面・安全面でのメリットもあります。

  • 滑りにくく、衝撃を吸収する
  • 調湿機能や消臭・抗菌機能


床材を検討する際に、その滑りにくさは大きなポイントとなるでしょう。滑りにくい床材にすることで、怪我などの事故が防げるだけではなく、足腰への負担を軽減して疲労感の増大も阻止できます。また、硬さも重要で、適度な硬さがあることで、関節痛や腰痛、ヘルニアなどの発生率が低下するとも言われており、無塗装の木質系床材は、まさに「滑りにくさ」と「適度な硬さ」を兼ね備えている建材として注目されています。

そして、木材には湿気を吸収・放出する調湿機能があります。特に無塗装の天然木はその効果が高く、室内を快適な湿度に保ってくれます。また、アンモニアなどの悪臭の元となる成分を吸着する性質もあり、消臭・空気浄化効果を期待できます。最近では、木材の匂い成分がダニの行動を抑制し、木質床ではダニの数が減少することも分かっていることから、福祉施設や医療施設でも内装の木質化が進んでいます。



その③ 経済的・社会的効果

木材の利用は、私たちの身近な生活だけではなく、国全体を“元気”にする効果もあります。

  • 国内林業や木材産業の活性化
  • 地産材・地域材の積極的利用に伴う地域経済の発展
  • CSR
  • 製材・運搬・建設時のトータルCO2削減


先ほどもお話した通り、日本は世界有数の森林大国です。国は、その基調な資源を経済の発展に利用することを目指しています。衰退の一途をたどっていた国内林業や木材産業を活性化させるだけではなく、過疎化したエリアでの地域材を使うことで、その地域全体の経済も潤うことが期待できます。

そして、企業の自社ビルや関連施設の木質化を進めることはCSR(corporate social responsibility 企業の社会的責任」的観点からも、大きな意義があるでしょう。企業の先進的な考えをアピールできるだけではなく、環境保全への姿勢を表明することができるのです。

そして、何よりも木材を使うことは、他の建材と比べても製材時や建設時に発生するCO2が少なく、国内産を使えば運搬時のCO2量も大幅に削減できます。CO2だけではなく、その他の地球温暖化効果ガスの発生を極力抑えられるため、環境的観点からも大きな効果が期待されています。

一口メモ

各効果の根拠となるデータを詳しく知りたい方は、下記資料をご覧ください。様々な機関が調査した研究結果やアンケート結果が掲載されています。
公益財団法人 日本住宅・木材技術センター|内装木質化した建物事例とその効果-建物の内装木質化のすすめ-





内装を木質化する際の注意点

内装の木質化は様々な効果をもたらすため、積極的に取り入れたいところですが、その際に知っておかなくてはいけない注意点があります。是非、これから紹介するポイントを踏まえて、インテリアに木材を取り入れてみましょう。


内装制限の有無

建築基準法施行令(第128条の3の2、第128条の4、第129条及び第112条、第128条の3)では、ホテルや店舗、劇場などの特殊建築物に対して、その規模によっては使用できる内装材を制限しています。それが、一般的に言う「内装制限」です。建物の用途や構造、規模によっては、不燃材料・準不燃材料・難燃材料を用いなくてはいけません。

では、内装制限を受ける場所では内装を木質化することはできないのでしょうか?決してそうではありません。木質系建材の中でも、不燃材料や準不燃材料、難燃材料の認定を受けているものも多くあります。それらを使用すれば、制限を受ける建物であっても、内装木質化は可能です。

〈関連コラム〉
下記コラムでは、不燃材料や準不燃材料、難燃材料について詳しく解説しています。是非合わせてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|コラム|公共施設・商業施設に欠かせない不燃材料。防火性能や突板練付不燃板について解説



経年変化やメンテナンス

木材は、その他の金属系材料やタイルなどの材料とは異なり、経年変化が顕著です。どうしても日焼けなどによって変色したり、細かなキズや汚れがついてしまいます。まずはその点をしっかり理解して採用しないと、後からクレームになってしまうかもしれません。

ただし、これらの経年変化を”楽しむ”流れがあるのも事実です。最近では、新しい木材を敢えて「エイジング加工」や「ウェザリング(風化)加工」するケースも増えていますし、木材ならではの経年変化は、利用者にとってその建物への愛着へとつながります。

つまり、使っているうちの汚れたり傷がつくことは、決してマイナスな要素ではなく、むしろプラスに働く場合もあるのです。デザインや設計をする際は、その点についても十分理解し、説明することをおすすめします。万が一、大きなキズや汚れがついた場合でも、部分取り替えは補修が可能な点も木材の魅力です。建物の長寿命化が進む中、メンテナンス性がある点は、他の建材と比べても大きなメリットとなるでしょう。



こんな建築物にこそ「内装木質化」がおすすめ

では、どのような建物のインテリアに木材を取り入れれば良いのでしょうか?内装木質化がもたらす効果を踏まえると、下記のような建物に取り入れることをおすすめします。

  • 住宅
  • 宿泊施設
  • 教育施設
  • 医療・福祉施設
  • オフィス


今までも住宅のインテリアには積極的に木材が取り入れられてきましたが、癒し・リラックス効果があることから、宿泊施設にもウッドインテリアはおすすめです。特に、よい睡眠へと誘ってくれるヒノキなどを用いると良いでしょう。

集中力を高めて怪我などの事故を少なくできる点から、教育施設への導入も増加傾向にあります。実際、現時点でも文部科学省によって校舎の木質化も進んでいます(文部科学省|木の学校作り)。また、図書館での採用も少なくありません。

そして、木による調湿機能や消臭機能、抗菌機能は、病院や老人ホームなどの医療施設や福祉施設にも適しています。今までは転倒防止や掃除のしやすさから、滑りにくいビニル系床材が多く採用されていましたが、近年では、木質床を取り入れるケースも年々増えています。

さらに、ここ数年オフィスの木質化が特に進んでおり、壁や天井、パーテーション材に木材を取り入れたり、家具も木製に変える現場が少なくありません。ストレスを緩和して作業効率を高める目的だけではなく、環境への配慮を世間へアピールする目的で導入しているケースも多いです。

このように、内装の木質化は様々な形態の建物に取り入れられつつあります。確かに、耐久性やコストを考えると全ての建物に適しているとは言えませんが、少なくとも施設利用者にとって、インテリアに木材を取り入れることはたくさんのメリットをもたらします。是非、デザインや設計の際には、木材の積極的利用を検討してみましょう。

一口メモ

下記資料では、実際に内装を木質化した事例が数多く紹介されています。合わせてご覧ください。
公益財団法人 日本住宅・木材技術センター|内装木質化した建物事例とその効果-建物の内装木質化のすすめ-




関連する補助制度は?

内装の木質化や地産材利用について、各省庁や関連団体によって様々な助成事業が作られています。ここではその一部を紹介します。


【公益財団法人 日本住宅・木材技術センター】
木材需要の創出・輸出力強化対策のうち内装木質化等促進のための環境整備に向けた取組支援事業のうち内装木質化等の効果実証事業

【文部科学省】
サステナブル建築物等先導事業 (木造先導型)
公立学校施設整備費負担金

【その他自治体による事業】
埼玉県|県産木材を利用した住宅等への補助について
長野県|県産材利用推進室
福井県|県産材を活用したふくいの住まい支援事業
広島県|県産材消費拡大支援事業
(上記はあくまで一例です。その他の都道府県・市町村でも、地産材利用に関する助成制度があります)


ただし、どれも年度ごとの予算に限りがあり、いつ廃止になるか分からないため、申請すれば必ず通ると言う訳ではありません。利用を検討する際は、必ず担当各局に早めに問い合わせましょう。



恩加島木材の取り組み

私たち恩加島木材では、国内各地の地産材利用も積極的に行なっております。また、突板の流通市場に頼らずに原木市場や製材所から直接仕入れて、自社で選木・加工・販売することも可能です。原産地を日本国内に限定した樹種を常時取り扱っているほか、地産材を利用した突板も数多くご注文いただいております。その建物の社会的価値を高めるためにも、ぜひ国産材を使った突板製品をご検討ください。

地産材の納入実績
JR北陸新幹線・長野駅 コンコース内天井(長野県産杉利用)
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)


〈関連ページ〉
下記ページでは、当社が常時取り扱っている国産材を使った突板のラインナップや納入実績を紹介しています。ぜひご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|製品案内|原産地(日本)


まとめ|内装の木質化には多角的な効果があります

内装の木質化には多角的な利点が数多くあります。国を挙げて推し進めている点からも、これから新たに施設の建設を検討する際には避けては通れないポイントでしょう。ただし、どの建物においても内装の木質化が適している訳ではなく、用途や規模、使用方法、メンテナンス方法などに注意点はあります。設計やデザインをする際には、必ず木材も持つ特性を理解して、採用を検討してみてください。

私たち恩加島木材では、天然木突板を活用した様々な商品を製造販売しております。ですから、化粧板・ルーバー・リブパネル・有孔パネルなどを用いた、空間のトータルコーディネートを実現できます。統一性のある洗練されたデザインをご希望の際には、ぜひに一度恩加島木材にご相談ください。

〈関連ページ〉
当社の納入実績は下記ページをご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|納入実績

 

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