“人工突板”は天然木由来の建材。基礎知識やウッドショックとの関連性について解説

人工突板 在庫

突然ですが、皆さんは「人工突板」という建材をご存知ですか?

その名称から、人工物から作られた突板の模倣品を想像するかもしれませんが、歴とした天然木由来の素材です。

残念ながら、未だに認知度が低くなかなか普及していないのが現状です。

そこで、今回は「人工突板」について、基礎知識から作り方、環境問題への配慮まで詳しく解説します。

私たち“建築”に携わる人として、今後無視できないアイテムとなってくるはずなので、是非、今後の設計・デザイン業務の参考にしてください。

このコラムのポイント
●「人工突板」は、環境配慮型の今注目されている建材です。
●木材不足が問題になっている今だからこそ、「人工突板」の利用はとても意義があります。
●恩加島木材は、国内外から多数の高品質の天然木を仕入れ、常にお客様のニーズに応えられるよう努めております。




“人工突板”とは?

人工突板 スライス

「人工突板」は人工杢突板と呼ばれることもあり、成長が早く短かいサイクルで植林できる樹木を加工して作られます。

通常の突板は、ある程度太さのある木材をスライスしなくては必要な幅が確保できません。

そのため、どうしても成長に時間のかかる大きな木材が必要となってしまいます。

一方、人工突板は、細い木材をスライス・積層・圧着し、それを再度スライスして突板にします。

ですから、比較的樹齢が若く成長が早い樹木を利用することができ、安定的かつ継続的な供給ができるのです。

また、多様な木目柄を染色などして擬似的に作ることができるため、ワシントン条約で取引が制限されている木材や、ウォールナット・ローズ・チークなど希少価値が高く入手が困難な木材も再現できます。

そのため、世界各地において商業施設などの公共施設での使用実例は決して少なくありません。

では、なぜ日本ではそれほど注目されていないのでしょうか?

その理由は、国内製のものが少ないからです。

まだまだ日本では人工突板の開発・製造販売をしているメーカーは少なく、海外材に頼らざるを得ず、納期やコストの問題でなかなか普及が進んでいません。

ポイント!
私たち“恩加島木材”は、日本国内でも数少ない「人工突板」の開発・製造を進めているメーカーです。





“人工突板”はこうやって作られる

では、「人工突板」はどのようにして作られるのでしょうか?

ここでは、主な作業工程を紹介します。

原料木のロータリースライス

原木 ロータリー

丸太を“大根の桂剥き”のような要領で薄くスライスします。

スライスした単板を着色・木目を再現

単板を着色する際に、それぞれ微妙な色の違いを付けたり、敢えて湾曲させることで、後で積層した時に自然な木目を表現できるようにします。また、色味や木目のカーブを変えることで、様々な樹種を再現できます。

単板を積層して圧着

色付けした単板に糊付けをして、再現したい樹種の木目に近づけて積層します。それを高圧プレスして接着すると、ひと塊の木材となるのです。この糊にも色付けをして、アクセントとしたりもします。

突板にスライスするためのフリッチ加工

フリッチとは、突板にスライスするために丸太などを成形した角材のことです。

フリッチをスライス

ここからは、通常の突板を作る時と作業工程はそれほど変わりません。フリッチを厚さ0.2mm程度に薄くスライスします。

化粧板や突板シートなどに加工

合板や不燃板、強化紙などと貼り合わせて、建材として使える状態にします。乾燥・検品を経てから出荷されます。


このように、通常の突板と比べると製造工程は増えるものの、最新技術を駆使して仕上がりに遜色のない人工突板を提供できるのです。

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“人工突板”は天然木由来の自然素材

冒頭でもお話しした通り、「人工突板」はそのネーミング故に、木目をプリントした化粧板や樹脂などで人工的に木目を再現した商品と思われがちですが、あくまでも“天然木”を使用した建材です。

多くの人が抱くこのイメージこそが、普及を阻む要因となっているのではないでしょうか。

また、その製造には高度な技術はもちろん、木の特性を熟知した豊富な知識がなければいけないため、どの建材メーカーでも着手できる訳ではありません。

世界的に木材供給が不安定な今だからこそ、本来ならば需要がもっと増えても良いのですが、供給体制がなかなか整わず認知度が上がらないため、現状のように国内ではあまり使われていないのが現状です。



ウッドショックで注目の的にSDGsを実現できるって本当?

「人工突板」は、欧米を中心として以前より作られていましたが、先でも述べた“人工的な”イメージが先行して、あまり積極的に使われてきませんでした。

どうしても通常の突板や無垢材の人気の方が高く、どの国もそれらを積極的に製造・取引してきたのです。

しかし、ここで2021年に世界規模のウッドショックが発生しました。

中国・アメリカを中心に木材の抱え込みを行い、新型コロナウイルス感染拡大を抑制するべく、運輸手段が縮小されたことが主な原因です。

さらに、同時期に起こったウクライナ・ロシア危機がそれに拍車をかけました。

ロシアは世界有数の木材輸出国なのです。

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これらが要因で世界中で木材価格が高騰し、納期遅延などが深刻化しました。

それを受けて、今、短期間で成長する植林樹木を利用する「人工突板」の存在が注目されています。

良材の流通が少なくなったために、木目に欠点があるようなB材(B級材)を使わざるを得ず、木材の品質や色が安定しなくなるというような問題も多発したことから、大規模プロジェクトなどでは安定供給・質の確保の観点から、人工突板の魅力が再認識されたのです。

木材等級
引用:林野庁|森林資源の循環利用を担う木材産業


銘木と呼ばれる樹木は、一度伐採して再び植林すると、その後50年以上育てないと製材できるサイズにまで育ちません。

そのため、近い将来木材は間違いなく枯渇して、世界各国で取り合いが始まってしまうでしょう。

そうなれば、安定供給や適正価格での売買は難しくなり、より一層入手が困難になることは想像に難しくありません。

一方で、成長の早い植林木を材料とする「人工突板」は、持続可能な観点からもそのメリットは大きいと考えられています。

また、森林の木々をこまめに伐採して活用し、再び植林するというサイクルは、森を健康に保つためにも非常に重要なポイントです。

これらのことからも、「人工突板」の普及促進は、私たちの生活を快適に保つだけではなく、地球環境にとっても意義があります。

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基材次第で“不燃材料”にも

公共施設や商業施設など多数の人が集う建築物においては、火災時の被害を最小限に食い止めるために、「防火材料」の使用が義務付けられています。

防火材料は、加熱時の発熱量と有害ガス量などから「不燃材料」・「準不燃材料」・「難燃材料」に分類され、建物用途や規模によって建築基準法で定められた認定材料を使わなくてはいけません。建築基準法施工令(第108条の2・第1条)参照)

通常の突板製品は不燃基材を用いることで防火材料としての認定を受けていますが、人工突板も同様の基材に貼り付ければ内装制限のある建物にも用いることができます。

〈関連コラム〉
恩加島木材工業株式会社|コラム|公共施設・商業施設に欠かせない不燃材料。防火性能や突板練付不燃板について解説

〈関連ページ〉
弊社「天然木練付不燃突板シート」の各種認定書は下記ページをご確認ください。
恩加島木材工業株式会社|各種認定



恩加島木材の取り組みや今後の目標

私たち“恩加島木材”は、地球環境や森林維持のために様々な取り組みを行っております。

再生エネルギーの導入

自社工場への太陽光発電システムおよび蓄電池の導入を目指しています。
(2023年、本格導入予定)

持続可能な製品の開発製造

植林木を利用した人工突板の開発を進めています。

地産材の積極的利用

日本の貴重な資源である“森林”、そして林業・製材業を守るため、原産地を日本国内ならず地域を限定した樹種を積極的に取り扱っています。

地産材の納入実績
JR北陸新幹線・長野駅 コンコース内天井(長野県産杉利用)
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)


〈関連ページ〉
下記ページでは、当社が常時取り扱っている国産材を使った突板のラインナップや納入実績を紹介しています。ぜひご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|製品案内|原産地(日本)

〈関連コラム〉
地産材についてさらに詳しく知りたい方は、下記コラムも合わせてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|コラム|今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説



まとめ|人工突板は地球環境を見据えたサスティナブルな建材

人工突板は、資材の安定供給や品質確保という目先のメリットだけではなく、地球環境を維持するという長期的なメリットも持ち合わせた資材です。

しかし、まだまだその認知度は低く普及しきっているとは言い切れません。

設計デザインの際には、SDGsへの貢献、ひいてはCSR(企業の社会的責任)のアピールという目的で、ぜひ「人工突板」の活用を検討してみてください。

私たち恩加島木材は、今できること”を着々と実行し、将来にわたって日本の資源である“森林”を守り続けることを目標にしております。

環境に配慮した突板製品・化粧板製品をご希望の際には、ぜひに一度恩加島木材にご相談ください。

〈関連ページ〉
当社の納入実績は下記ページをご覧ください。
恩加島木材工業株式会社|納入実績



日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”

難燃_不燃複合板

建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。

天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ6・9mm)を貼り合わせた材料です。

しかし、今までの不燃突板化粧板には施工上の問題点がありました。

  • 重い
  • 割れやすい
  • 高コスト
  • ビスが効かない


それらの問題を解決したのが、恩加島木材の不燃突板複合板」です。

天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。
※幅290mmまでは、本実加工も可能です。

日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。

不燃突板複合板大臣認定取得


一口メモ
世界的に著名な建築家・隈研吾氏が主宰する隈研吾建築都市設計事務所が設計した和歌山県「有和中学校」新校舎の建物にも採用されました。





恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします

「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?

恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。

随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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