“森林環境贈与税”をわかりやすく解説|概要や目的から使い道・問題点は?

税金

皆さんは、「森林環境贈与税」という言葉を聞いたことはありますか?2019年に制定されたばかりの税金なので、まだ詳しくは知らないという方が多いでしょう。しかし、私たち国民にとっては、今後切っても切り離せないものとなります。

そこで、今回は「森林環境贈与税」の概略から主な使い道、今後課税される「森林環境税」まで詳しく解説します。現状の問題点についても触れていますので、ぜひ皆さんも参考にしてください。

このコラムのポイント
●「森林環境贈与税」は、日本の大切な資源である森林を維持管理・発展させるために設けられて制度です。
●「森林環境贈与税」は、森林を守るためだけではなく、林業や製材業に関する啓蒙活動や、木育の推進などにも使われています。
●恩加島木材では、建物の木質化を実現させるために、常に技術革新を進め、高品質の天然木突板製品を製造・販売しています。




2019年に施行された「森林環境贈与税」とは?「森林環境税」にも注目

環境

2019(平成31)年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が国会で成立し、それに伴い「森林環境譲与税」と「森林環境税」が創設されました。「森林環境譲与税」は、2019(令和元)年から既に贈与が始まっており、「森林環境税」は2024(令和6)年から課税されます。

森林の有する公益的機能は、地球温暖化防止のみならず、国土の保全や水源の涵養(かんよう)等、国民に広く恩恵を与えるものであり、適切な森林の整備等を進めていくことは、我が国の国土や国民の生命を守ることにつながる一方で、所有者や境界が分からない森林の増加、担い手の不足等が大きな課題となっています。

このような現状の下、平成30(2018)年5月に成立した森林経営管理法を踏まえ、パリ協定の枠組みの下における我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、森林環境税が創設されました。

引用:林野庁|森林環境税及び森林環境譲与税|森林環境税創設の趣旨



日本の貴重な森林自然を保全・発展させることを軸として、さらには地球温暖化対策における目標達成や、近年増えている災害防止についても財源を確保するために作られました。

そのため、各自治体は適正に活用されることが担保されるように、森林環境譲与税の使途については自治体のホームページなどでその使途を公表しなければなりません。

森林環境贈与税

2019(令和元)年度から、市町村・都道府県へ市有人工林面積と林業就業者数・住民人口などの基準から算出された指数を元に、予算額を分配して贈与されています。

施工翌年の2020(令和2)年には、「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が一部改正され、令和2(2020)年度から令和6(2024)年度までの森林環境譲与税贈与額について、前倒しで増額されることが決まっています。

森林環境税

2024(令和6)年度から、市町村単位で国税として年間1人当たり1,000円を徴収します。


引用:林野庁|森林環境税及び森林環境譲与税|森林環境税・森林環境譲与税の仕組み


日本国土の多くを占める森林は、地球温暖化防止に向けたカーボンニュートラルや、水源のかん養、地滑りなどを防ぐ防災としての目的を持ちます。つまり、国人の健やかで安心した暮らしを維持するにはもはや欠かせない存在でしょう。

その森林の保全や整備を進めていくことで、人材不足や高齢化に悩まされている林業・製材業の活性化や、森林所有エリアが過疎化することを食い止めることができるとされており、「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」の制定はその大きな目標に向けた第一歩となりました。

「森林環境贈与税」「森林環境税」によって、国民一人一人が豊かな森林資源を守るための財源を負担することで、森林整備のために必要となる財源を安定的かつ永続的に確保できるのです。



森林環境贈与税の主な使途は?

先でもお話しした通り、「森林環境税」や「森林環境贈与税」は国民が負担する国税です。そのため、各自治体は使い道を住民誰もが簡単に確認できる方法で開示しなくてはいけません。では、具体的にはどのような取り組みに使われているのでしょうか?ここでは主な使い道6つを紹介します。

〈関連ページ〉

下記ページでは、森林環境贈与税が配布された各自治体の使徒公表ページが一覧になっています。気になる方は、ぜひご覧ください。

林野庁|森林環境税及び森林環境譲与税|使途公表URL一覧

その① 適切な間伐の実施や促進

森林は人が手入れをしなければ荒廃が進み、健やかに成長することはありません。適度な間伐(間引き)は、樹木の成長を促して、森の土砂崩れや洪水の発生を防ぐだけではなく、倒木による自然災害も抑制できます。また、間伐したことで樹木の下に生息する草木も生えやすくなり、栄養豊富な土壌となってさらに樹木が丈夫に育ちます。

しかし、現状では間伐に必要な人材は年々減少傾向にあり、このままでは日本の森林は衰退していってしまいます。そこで、森林環境贈与税を間伐の実施や促進に向けた費用へ補填する自治体が多いです。

その② 水源のかん養や多様生物の保全保護

森林の樹木は、地中で十分に根を広げることで土がしっかりと水を抱え込み、“自然の貯水ダム”の役割を果たします。昨今水不足が問題となる地域が増えている中、森林を健やかな状態に保つことで、水を中心とした生態系ができ、環境が保全されるのです。

その③ 二酸化炭素量抑制

森林は、成長し維持される上で多くの二酸化炭素を吸収します。そのため、森林を健全な状態に保全することで、二酸化炭素量抑制へ直接的につながります。

ここでキーワードとなるのが、「二酸化炭素の固定化」です。大気や排ガス中に含まれるCO2を固定する技術に関する研究が各分野で進められている中、植林のように植物の光合成を利用して二酸化炭素を固定する方法が注目されています。

引用:林野庁|森林は二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の防止に貢献しています

植林だけではなく、既存の衰退した森林を再生させたり、森林管理を徹底することも効果的とされているため、「森林環境贈与税」「森林環境税」はそれに向けて多く使われています。

その④「所有者不明森林」の管理

林業従事者の高齢化や森林周辺地域の過疎化に伴い、所有者がわからず管理が行き届いていない荒廃した森林が増えています。その面積は年々と増えており、自治体もその処理に頭を悩ませています。

所有者が分からなくなり、荒廃が進む山林が増えている。国土交通省はこのほど、2050年までに新たに最大47万ヘクタールの森林が「所有者不明」になるとの推計をまとめた。所有者や境界がはっきりしないと間伐や林道整備もままならないうえ、林業の集約も進まない。航空写真と全地球測位システム(GPS)で境界を調べたり、間伐材を製品化したり。自治体や森林組合が知恵を絞っている。

引用:日本経済新聞|山林の荒廃どう防ぐ 2050年までに「所有者不明」47万ヘクタール


今までは、所有者の分からない森林の管理は自治体ごとに資金を捻出して行っていました。そのため、どうしても十分な保全対策は取れず、荒廃した森林が増えてしまっていました。しかし、今後は森林環境贈与税を主な財源として、森林経営管理法に則り、林業経営に適さない森林においても市町村が十分な管理をすることができるようになりました。

その⑤ 林業の人材育成やシステム化

林業の担い手不足や高齢化を解決するために、地方自治体は林業の普及活動や啓蒙活動を実施しています。また、現場技能者の育成や指導も行うことで、より健全な労働環境を整える取り組みを行っています。

さらに、森林経営管理制度を活かした管理体制のシステム化を整備・推進したり、従事者や地元住民への意識調査などへの税収は活用されているのです。

その⑥ 木材の利用促進や普及啓発

森林環境贈与税は、何も林業や製材業など直接森林と関わる人へ使われるだけではありません。それ以外の住民に向けた“木育”の実施や、木材製品の贈呈、植樹イベントの実施、公共施設の木質化など、森林から生み出された木材をさらに活用できるようにする取り組みが行われています。

〈関連コラム〉
下記コラムでは、“木育”について詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|コラム|“木育”とは?その目的やサスティナブル社会との関連性は? メリットから補助金について徹底解説


森林環境贈与税に問題点や課題点はある?

税金問題点

2019年度にスタートした「森林環境贈与税」は、毎年総額200〜500億円が対象となる各自治体へ分配されています。さらに2024年度からは「森林環境税」として、600億円程度の税収が追加で配布されることが見込まれでいます。

これほど多額な税金がもれなく有効活用されていればいいのですが、残念ながら自治体によっては使い切れていないところも少なくありません。

都道府県令和2年度・譲渡額令和2年度・事業総額(=使われた額)
北海道3,066,699(千円)1,183,686(千円)
岩手県183,751(千円)53,722(千円)
東京都1,440,382(千円)216,057(千円)
データ引用: 令和2年度 森林環境譲与税 譲与額(都道府県別)北海道|令和2年度の森林環境譲与税に関する決算状況一覧令和2年度 岩手県における森林環境譲与税の使途について令和2年度 東京都 森林環境譲与税 使途一覧


上記データからも分かる通り、譲渡されたお金の多くが使い残されており、残金は基金などに積み立てられ続けているのが現状です。たしかに、今後に向けて財源をキープしておくことも重要ではありますが、今後は各自治体で使い道について大きな見直しがされることを願うばかりです。



恩加島木材の取り組み

私たち恩加島木材では、国内各地の地産材利用も積極的に行なっております。

当社では、突板の流通市場に頼らずに原木市場や製材所から直接仕入れて、自社で選木・加工・販売することも可能です。原産地を日本国内に限定した樹種を常時取り扱っているほか、地産材を利用した突板も数多くご注文いただいております。その建物の社会的価値を高めるためにも、ぜひ国産材を使った突板製品をご検討ください。

地産材の納入実績
JR北陸新幹線・長野駅 コンコース内天井(長野県産杉利用)
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)


〈関連ページ〉
下記ページでは、当社が常時取り扱っている国産材を使った突板のラインナップや納入実績を紹介しています。ぜひご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|製品案内|原産地(日本)

〈関連コラム〉
地産材についてさらに詳しく知りたい方は、下記コラムも合わせてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|コラム|今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説



まとめ|森林環境贈与税は森林や私たちの生活を守るための財源

今や、日本の森林資源を保全し活用することは、国の大きな目標でもあり必達しなくてはいけない課題であり、「森林環境贈与税」や「森林環境税」はそのために作られた制度です。

「都心に住んでいるから森林のことにお金は払いたくない」「身近でない森林に税金を使われるのは納得できない」そんな考えを持つ方も少なくないでしょう。

しかし、日本経済の活性化や災害防止、さらには地球環境を守るためにも、とても有効な手段となるはずです。

私たち恩加島木材では、建物の木質化が実現できるよう、多種多様な樹種から高品質の天然木突板商品を製造販売しています。弊社の化粧板やルーバー・リブパネル、有孔ボードなどを、ぜひ設計やデザインにご活用ください。

〈関連ページ〉
当社の納入実績は下記ページをご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|納入実績


日本初〉大臣認定取得|恩鹿島木材の“不燃突板複合板”

難燃_不燃複合板

建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。

天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ15mm)を貼り合わせた材料です。

しかし、今までの不燃突板複合板には施工上の問題点がありました。

  • 重い
  • 割れやすい
  • 高コスト
  • ビスが効かない


それらの問題を解決したのが、恩加島木材の不燃突板複合板」です。

天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 針葉樹合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。

日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。

不燃突板複合板大臣認定取得


一口メモ
世界的に著名な建築家・隈研吾氏が主宰する隈研吾建築都市設計事務所が設計した和歌山県「有和中学校」新校舎の建物モックアップにも採用されました。




恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします

「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

〈関連ページ〉 カタログ請求や見積依頼、お打合せ依頼等は下記ページよりお問い合わせください。
恩加島工業株式会社|お問い合わせ