防音・吸音効果がある「有孔ボード」の仕組み、メリット・デメリット、種類を解説

防音・吸音効果がある「有孔ボード」メリット・デメリットと種類

住宅からホールや体育館など音が響きやすい施設を中心に、内装材として幅広く採用されているのが「有孔ボード」です。

そこで今回は、「有孔ボード」の防音性が高い仕組みから内装材としてのメリット・デメリット、種類について、“1947年創業の恩加島木材”が解説します。

有孔ボードを選ぶ際のポイントやおすすめの内装材も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

このコラムのポイント
●有孔ボードは吸音性能が高い仕上げ材として、音楽ホールや体育館、学校など幅広い建物の内装に採用されています。

●有孔ボードの吸音性能は、納まり(空気層の有無)や孔の径・ピッチによって異なり、公共建築物においては内装制限をクリアするための不燃性能も必要です。

●恩加島木材は、成長が早い小径丸太材や、環境負荷が少ない国産材(地域材)を積極的に活用し、高品質でレパートリー豊富な「突板化粧板」を製造販売しております。


有孔ボードとは|防音の仕組みと吸音率

有孔ボードとは|防音・吸音性の仕組み

「有孔ボード」とは、パネルに小さな孔が等間隔に開けられている内装仕上げ材です。

有孔パネルやペグボード、パンチングボードなどと呼ばれる場合もあります。

有孔ボードの最も注目すべき特徴は「防音性」です。

防音という言葉には「遮音」と「吸音」が含まれますが、有孔ボードは吸音性に優れています。

遮音音を跳ね返す性能
吸音音を吸収して反響を抑える性能

通常の壁や天井仕上げに用いられる合板と比較すると、その吸音性の差は歴然です。

有孔ボードの吸音率
(画像引用:国立研究開発法人 科学技術振興機構|J stage|音響材質の性質と使い方

上のグラフでも分かる通り、有孔ボードの吸音率は合板率と比べると最高で6倍も高く、特に500〜1000Hz付近(男性の話し声・歌声・楽器音の波長領域)の音を最も吸収します。

「有孔ボード」が吸音する仕組みは主に3つの原理が関係しています。

空気層への音の入射

音波が孔から裏の空気層に入射して、反響が抑制されます。

ヘルムホルツ共鳴※

有孔ボードから裏の空気層に音が入り、その空気振動との摩擦で音エネルギーを減衰させます。

熱エネルギーへの変換

入射音による空気の振動によって摩擦が起きて、音エネルギーが熱エネルギーに変換されて消費されます。

※ヘルムホルツ共鳴:ワインボトルやフラスコなど、細長い口と空気だまりを持つ形状において、空気が入ると音が中で共鳴する現象で、気力が変動することで空気が振動して音が出る

ポイント
「有孔ボード」は裏に空気層を設けることにより、初めて吸音性を発揮します。

有孔ボードの裏に空気層がなく構造躯体やその他パネル材に直付けする納まりでは、吸音性は発揮されないので注意しましょう。

空気層の厚さや孔径によって吸音率が高まる周波数が異なる点も設計において重要なポイントです。

※空気層の厚さ・有孔ボードの孔径の組み合わせによる吸音率の違いは「機能性×意匠性=恩加島木材の有孔パネル。その性能や種類を徹底解説」をご覧ください。

有孔ボードの使い方|建物用途と施工部位

有孔ボードを壁・天井一面に採用するメリット
納入実績:茨城県つくば市「香取台小学校」

有孔ボードは防音性を必要とする建物に多く採用され、さらに施工部位も限られます。

建物用途音楽ホール
体育館
会議室
音楽スタジオ
ダンススタジオ
学校・幼稚園(ホール・教室・音楽室・視聴覚室・廊下・オープンスペースなど)
施工部位壁仕上げ
天井仕上げ
パーテーション


ポイント
「有孔ボード」は吸音する場合以外に、パネルの孔を利用した収納・ディスプレイを目的に採用される場合もあります。



有孔ボードのメリット・デメリット

有孔ボードのメリット・デメリット

有孔ボードを内装仕上げ際に採用する場合、メリットとデメリットの両方を知っておく必要があります。

メリット

  • 防音(吸音)設計が容易で効果が立証されている
  • そのまま仕上げ材に使える(=防音材を用いるプランよりも材料費と施工費を削減できる)
  • デザインのアクセントになる(=同じ表面材の合板と組み合わせると、デザインに規則性が生まれる)

デメリット

  • 孔の数と径(開孔率)によって、周波数ごとの吸音率が変わるため、材料選定に注意が必要
  • 空気層と組み合わせなければ吸音効果を得られないため、納まり設計に注意が必要
  • 特殊建築物や大規模建築物では防火材料(不燃・準不燃・難燃材料)として認められた有孔ボードでなくてはいけない
ポイント
「有孔ボード」を選ぶ際には、種類ごとの特徴を踏まえて、チェックポイントを押さえる必要があります。

公共性の高い建物や施工範囲が大きい建物に有孔ボードを採用する際には、特に材料選定に注意しましょう。



有孔ボードの種類と選ぶポイント

有孔ボードの種類

有孔ボードは、表面材と基材(きざい)の組み合わせや不燃性能、サイズ・厚さ、孔径・ピッチの種類を踏まえて、採用の目的に適した材料を選びましょう。

表面材

有孔ボードの表面材は、主に以下の3種類に分けられます。

石膏ボード
(不燃紙)

主にホワイト系の塗装済み製品と、自由なカラーに仕上げられる現場塗装(無塗装)品があり、主に不燃性能が求められる空間の天井仕上げ材として採用されます。

化粧シート貼り

色柄をプリントした合板・MDFに孔開け加工した製品で、天井・壁の仕上げ材以外に、家具・パーテンションの仕上げ材として採用されます。

突板シート貼り

天然木を薄くスライスした突板(つきいた)を合板・MDFなどに貼り合わせた製品で、木目を生かした内装デザインにおいて、天井・壁の仕上げ材として採用されます。

▶︎おすすめコラム:突板でデザインの幅が広がる。「突板」のメリットから無垢材などとの違いまで解説

基材

有孔ボードは基材の種類によって不燃性能や厚さが変わりますので、見た目に影響する表面材と同様に選定の際にはその特徴を押さえておきましょう。

合板

合板とは、木材を薄く剥いだ単板を木目の方向が交互になるように重ね合わせたパネル材で、強度があり、無垢材よりも変形※するリスクを抑えられます。

標準的な建築材料で、不燃性能が求められない空間の天井・壁仕上げ材や、家具・パーテーションの材料など、幅広く採用されています。

※変形:湿度(含水率)の変化によって、反り・ねじれ・伸縮・割れなどが発生する

MDF(中質繊維板)

MDFとは、繊維状に細断した木材チップを接着剤と混ぜて熱圧成形するパネル材で、品質が均一で加工しやすく、安価な点がメリットです。

ただし、湿気によって波打つ可能性があるため注意が必要です。

主に、安価な家具やパーテーションの材料に用いられます。

不燃パネル

ロックウールなどが原料の不燃パネルや石膏ボード※を基材とした有孔パネルは、内装制限など不燃性能が求められる場所に採用できます。

国土交通省の認定を受けている材料を基材にしたとしても、有孔処理してしまうと認定外となるので、内装制限のある施設に有孔ボードを使う場合には、仕様を十分確認しましょう。

※石膏ボード:厚さが12mm以上で、ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものは、建設省(現国土交通省)告示第1400号によって不燃材料として認定を受けている

特殊建築物や大規模建築物の天井・壁仕上げに有孔ボードを採用する場合は、内装制限に注意が必要です。

内装制限とは、不特定多数が利用し、火災時の周囲へ及ぼす影響が大きいと想定できる建物に対して課せられるルールで、居室・通路(廊下や階段)の天井・壁仕上げに防火材料※の使用が義務付けられています。

※防火材料:不燃・準不燃・難燃材料の総称で、内装制限においては建物の用途・規模(延べ床面積)・構造種別・天井か壁かによって、求められる材料の性能グレードが異なる

※内装制限については「建築基準法で定められた“内装制限”とは? 概略や緩和から「木」を取り入れる方法まで詳しく解説」「内装制限の範囲はどこまで?対象となる部分・ならない部分を徹底解説」「「学校は内装制限を受けない」の真実|法令の詳細や内装木質化、設計ポイントについて解説」を併せてご覧ください。

ポイント
パネル材として防火材料の認定を受けている製品でも、工場や現場で孔開け加工すると認定が無効になります。

そのため、内装制限など防火規定を受ける場所に有孔ボードを施工する場合は、有孔ボードとして国土交通大臣から防火材料として認定を受けている製品を選ぶ必要があります。

恩加島木材の天然木練付有孔化粧板(PANESSE)は、突板を用いた有孔ボードにおいて、不燃材料として認定を受けた“国内初”のプロダクトです。

サイズ・厚さ

有孔ボードのサイズと厚さは、設計デザイン(パネル割)や施工効率(工期・施工費)、材料コスト(材料ロス)に影響を及ぼします。

メーカーやシリーズによってサイズ・厚さ展開は異なりますが、一般的なラインナップは以下の通りです。

厚さ・サイズ / 基材合板MDF不燃パネル
厚さ(mm)2.5
4.5
5
9
12
15
2.5
4.5
5
7
9
12
15
6
9
12
15
サイズ(尺)3*6
3*8
4*8
3*6
3*8
4*8
3*6
3*8
4*8
(弊社では、上記以外の特注サイズのオーダーも承っております)

孔径・ピッチ(開孔率)

有孔ボードの孔径とピッチ(間隔)によって、吸音性能が変わります。

ここでキーワードとなるのが「開孔(開口)率(%)=(孔の総面積/ボードの面積)×100」です。

下のグラフを見ても分かる通り、同じ空気層の条件では、開孔率が高い有孔ボードの方がほとんどの周波数の音を多く吸収します。

有孔ボードの開孔率と吸音率の関係
(画像引用:国立研究開発法人 科学技術振興機構|J stage|音響材質の性質と使い方

※有孔ボードの吸音率は、孔径・ピッチだけではなく、裏面の仕上げや空気層の厚さによって変動します。

メーカーやシリーズによって孔径やピッチのレパートリーは異なりますので、製品選びの際には詳細までご確認ください。

孔径ピッチ
φ5mm
φ6mm
φ8mm
φ9mm
長孔
P=25mm
P=30mm
(孔径とピッチの組み合わせは弊社までお問い合わせください)
有孔ボードの孔径・ピッチの違い
(有孔ボードにおける孔径・ピッチの違い)

▶︎おすすめコラム:「有孔ボードを壁一面に」メリット・デメリットと材料選びのポイント」をご覧ください。


防音目的なら「寒冷紗貼り」仕様の有孔ボードがおすすめ

有孔ボードの吸音性能を高めるのが「寒冷紗貼り」です。

寒冷紗(かんれいしゃ)とは、ポリエチレンやポリエステル、麻を平織りした布地で、有孔ボードの裏面に貼ると、ボードと寒冷紗の間に薄い空気層が形成され、その中で音が減衰して吸音性能が高まります。

ただし、この寒冷紗貼りのオプションを選べるメーカーは限られるため、製品を選ぶ際にはご注意ください。

ポイント
恩加島木材の有孔ボードは、40種類以上の取り扱い樹種から突板をお選びいただけるだけではなく、裏面の寒冷紗(白・黒)処理もご指定いただけます。

加えて、以下のセレクトも可能ですので、お気軽にご相談ください。

・クリア塗装
・着色塗装
・抗ウィルス仕上げ
・木口貼り
・木口塗装
・うづくり加工
・面取り加工
・裏面の不燃クロス貼り

▶︎おすすめコラム:木目を活かす木材の表面仕上げとは?塗装や加工の種類を紹介


トータルコーディネートが可能な恩加島木材の突板化粧板シリーズ

恩加島木材の“突板化粧板”

有孔ボードは防音を目的として採用されるケースが大半ですが、やはりその意匠性は重要です。

恩加島木材の「PANESSE(パネッセ)」は、天然木の風合いを残した高品質な突板化粧板※シリーズで、同じ突板を用いた以下の内装仕上げ材をお選びいただけます。

有孔ボードを含めたトータルデザインを実現させたい方は、ぜひ設計プランにご採用ください。

※突板化粧板:突板と呼ばれる天然木を0.2〜0.3mmの薄いシート状にスライスした素材を表面材とし、それを基材である合板などに接着した仕上げ用パネル材

表面材と基材

不燃ボード(天然木練付不燃化粧板)

不燃材の表面に天然木突板0.2mmを貼り合わせた化粧板で、国土交通省からの個別認定を取得しています。

■不燃認定番号 NM-1272/NM-1368

難燃ボード(天然木練付難燃化粧板)

弊社独自の加工技術で作り上げた難燃化粧板で、国土交通省からの個別認定を取得しています。

■難燃認定番号 RM-0060

化粧合板・化粧MDF

もっとも汎用的な突板練付化粧板で、基材は合板・MDF・ランバーコアからお選びいただけます。

突板シート(天然木練付不燃突板シート)

特殊複合紙の表面に突板0.2mmを貼り合わせた総厚0.4mmの化粧シートで、国土交通省からの個別認定を取得しています

パネル材では対応が難しい曲面・R部分の施工におすすめです

■不燃認定番号 NM-5336/NM-5337

有孔パネル(天然木練付有孔化粧板)

不燃ボード(天然木練付不燃化粧板)に有孔加工を施した機能性化粧板で、国土交通省からの個別認定を取得しています。

■不燃認定番号 NM-5855

テクスチャーボード(天然木練付テクスチャーボード)

突板化粧板の表面に特殊加工を施した高意匠化粧板で、不燃タイプとMDFタイプのそれぞれで5つのラインナップからお選びいただけます。

  • ウェーブ
  • オビノコ
  • うづくり
  • なぐり
  • テキスタイル

リブパネル(天然木練付リブパネル)

突板化粧リブを天然木練付化粧板に貼り付けたリブ付きパネルで、国土交通省からの個別認定を取得しています。

さらに、あらかじめ工場でパネル組みをする高精度・省施工型である点も人気のポイントです。

■準不燃認定番号 QM-1098

ルーバー(天然木練付ルーバー)

天然木練付の高意匠ルーバーで、基材は木芯・不燃材・アルミ押出成形品から選定でき、国土交通省からの個別認定を取得しています。

■不燃認定番号 NM-1272 / NM-1368

パネリング・フローリング

施工性に優れ、住宅・学校・福祉施設などの床材や体育館・武道場などの壁仕上げ材にご採用いただいています。

不燃対応のパネルも製作可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

▶︎おすすめコラム:突板・挽板・無垢材それぞれの違いとは?どれがおすすめ?特性から選び方まで徹底解説

▶︎おすすめコラム:突板製品はこうして生まれる。森から現場までのプロセスは?生産工程や恩加島木材の強みを紹介

恩加島木材の製品は、以下の点が特長です。

  • 無垢材と同様のナチュラルな質感と見た目
  • 無垢材よりも湿度変化による変形が少ない品質安定性
  • 無垢材よりリーズナブルな価格
  • 樹種(木目・カラー)の豊富なレパートリー
  • 同じ突板で非不燃・不燃を選べる柔軟性
  • ウレタン・オイル塗装に加えて、自社工場で手がける「UV塗装・日焼け防止塗装・抗菌抗ウイルス塗装」などの特殊塗装


▶︎おすすめコラム:突板不燃化粧板|特徴やメラミン化粧板・化粧ケイカル板との違いを解説

▶︎おすすめコラム:ウレタン塗装・UV塗装・ラッカー塗装・オイル塗装… 各種木材塗装の違いは?抗ウイルス塗装についても解説

取り扱い樹種一覧(QRコード)



まとめ

有孔ボードは吸音性能が高い仕上げ材として、音楽ホールや体育館、学校など幅広い建物の内装に採用されています。

ただし、有孔ボードの吸音性能は、納まり(空気層の有無)や孔の径・ピッチによって異なり、公共建築物においては内装制限をクリアするための不燃性能も必要です。

設計デザインに木材・木質建材を採用する場合は、施工部位・用途に応じて適した材料を選びましょう。

恩加島木材は、高品質でレパートリー豊富な「突板化粧板」を製造販売しております。

「思い通りのデザインを実現したい」「環境に配慮した建物にしたい」という方は、高品質でレパートリー豊富な恩加島木材の突板製品をご採用ください。