木材の含水率が建築にもたらす影響は?強度・仕上がりとの関係について

木材の含水率

木材の強度や仕上がりに影響を及ぼすのが「含水率」。

含まれる水分量によって、その木材の性質は大きく異なります。

そこで、今回は「木材の含水率」についての基礎知識から、法的な基準などについて解説します。

「美しいウッドインテリアに仕上げたい」「“木”を取り入れたいが、経年変化は心配」とお考えの方は、是非参考にしてください。

このコラムのポイント
●木材の含水率は、強度と仕上がりに大きく影響し、建築基準法でも基準が定められています。
●“突板化粧板”は、含水率の変化による変形リスクが低く、天然木の風合いを持ち合わせているため、本物志向の方にもおすすめです。
●恩加島木材は、環境に配慮しつつ国内外から多数の高品質の天然木を仕入れ、常にお客様のニーズに応えられるよう努めております。




木材の含水率はどのくらい?

木材の含水率とは、どのくらいの水分が含まれるかを数値化したもので、以下の式で求められます。

【含水率(%)】
(「水分を含んだ状態での木材の重さ」ー「水分が全く含まれない“全乾状態”での重さ」)÷「“全乾状態”での重さ」× 100


木材は伐採したばかりの状態から徐々に乾燥していくのですが、含水率によって状態が異なります。

〈飽水状態〉

伐採前の木で、細胞などが自由水(自由に移動できる水分)と結合水(たんぱく質などと結合して移動できない水分)によって満たされた状態で、含水率100〜200%。

〈生材(なまざい)状態〉

伐採されてまもない状態で自由水が乾燥し始めた木材。含水率50%以上。

〈繊維飽和点状態〉

自由水が全て乾燥し、結合水のみが残った状態の木材。ここから先は結合水は乾燥し始め、強度が上がっていく。含水率は30%程度。

〈気乾材状態〉

放置して結合水を乾燥させ、空気の湿度と平衡状態になった木材。含水率は季節や地域によって異なるものの、含水率は全国平均で15%程度。

〈全乾材状態〉

重量の変動がなくなるまで乾燥させた木材。ごく少量の結合水しか残っていないため、含水率は0%近く。(ただし、一度0%にしても放置すれば気乾材と同等の含水率まで戻る)


このように、生材から全乾材まで段階があり、樹種や用途によって適した状態が異なります。

日本国内の人工林に生えている樹木の44%(2017年時点)を占めるスギは、材料によって水分量が大きく異なり、品質を安定させることは困難とされていました。

しかし、近年は適切な含水率まで人工的にコントロールする“人工乾燥木材”のシェアが増えており、住宅用構造材においては61%にまで増加しています。(参考:林野庁

人工乾燥木材はKD材(Kiln Dry Wood)と呼ばれ、D25(=含水率25%以下)、 D20(=含水率20%以下)、D15(=含水率15%以下)と表記されます。




含水率は強度や仕上がりに影響するって本当?

木材は、含水率が繊維飽和点以下、つまり含水率が30%以下になると強度が増します。

ただし、含水率が5%以下になると細胞壁が収縮し、凝集力(原子・分子間に働き、固体などの物体を形成する力)がなくなり、強度は低下し始めるとも言われており、適切な含水率に保つことが重要です。

また、含水率低下による細胞壁収縮は、木材の反りや歪み、寸法変動などを引き起こしてしまいます。

ポイント
木材に含まれる自由水が乾燥する段階では強度に変化はなく収縮による変形はありませんが、繊維飽和点を下回り含水率が下がれば下がるほど結合水が乾燥して収縮が始まり、強度が上がるものの、変形も伴います。


そのため、建築材料として使うのであれば“含水率15〜25%“が最良の状態です。

強度と寸法安定性のバランスが良い人工乾燥木材のニーズは年々高まっており、1999年には木材総出荷量に占める人工乾燥木材の割合が11%だったのに対して、2008年には30%にまで増加しています。

人工乾燥木材の割合
(引用:国土交通省


通常は、屋外湿度と平衡状態である含水率15%程度が良いとされていますが、内装に使う木材は天候や気温の影響が少ないため、8〜10%程度のものを選ぶと良いでしょう。

なぜなら、空調機器による空気の乾燥で施工後に変形するリスクが少ないからです。




建築基準法・JAS規格での基準は?

リブパネル

木材の含水率は強度や仕上がりに影響するため、法的な基準が定められています。

そのため、材料を選ぶ際には、その含水率まで気を配る必要があるのです。

建築基準法

建築基準法施行令(第46条第2項第1号)では、建物の主要構造部に使用する木材は、国土交通大臣の定めた基準に適合していることが定められています。

ここで言う“国土交通大臣の定めた基準”とは、含水率が15%以下であることを指します。

構造耐力上主要な部分である柱及び横架材(間柱、小ばりその他これらに類するものを除く。以下この号において同じ。)に使用する集成材その他の木材の品質が、当該柱及び横架材の強度及び耐久性に関し国土交通大臣の定める基準に適合していること。

(引用:建築基準法施行令


その根拠は、含水率の高い木材を使用した場合は乾燥による収縮や割れによって、予期しない耐力低下が起こる可能性があるためとされています。(参考:建築物の構造関係技術基準解説書)

ただし、含水率に関する規定は、壁量規定の適用を除外するための条件であり、全ての木造建築物に係る制限ではありません。


JAS規格

日本農林規格等に関する法律(通称:JAS法)」では、木材の取り扱い方法に関する規格が定められており、構造用製材と造作用製材の含水率は20%以下、枠組壁工法構造用製材は19%以下、集成材は15%以下と設定されています。

JAS規格木材は、利用しやすいように用途別・製品別に規格が設定されており、一定の品質を保証される点がメリットです。

〈関連ページ〉

一般社団法人 全国木材検査・研究協会|製材のJAS制度






品質安定性と天然木の風合いの両方をもつ“恩加島木材”の突板化粧板

内装仕上げに木材を使う場合は、“突板化粧板”をおすすめします。

無垢材は施工時の含水率と時間が経過した状態の含水率の変動によって、反りや木割れが起きてしまうリスクは避けられません。

一方、突板化粧板は寸法安定性の高い合板などを基材にするため、施工性も高く湿度変化によって変形する心配が少ないのです。

実は、突板の原料は水分を多く含む生材(なまざい)。

柔らかい生材を薄くスライスしてから含水率10〜15%にまで乾燥させて基材と張り合わせることで、美しい木目を表現できます。

私たち“恩加島木材工業”は、1947年に創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、国内に限らず世界中の銘木を使って、良質でバラエティに富んだ内装材を提供し続けてきました。

突板の常備在庫はおよそ1000束に上り、その豊富なストックから、仕様やご要望に応じて一枚一枚丁寧に選定しています。

0.2mmという極薄にスライスされた突板は気温や湿度により、生き物のように大きく変化します。

その小さな変化を感じながら、熟練した職人が手作業でそれを貼り合わせていくのです。

貼り合わせた突板はその日の環境に合わせて、樹種ごとにプレス時間、温度、圧力を細かく調整し、高圧ホットプレス機で圧着し、化粧板などの製品となり、お客様の元へと届きます。

木の特性を熟知した“恩加島木材工業”が自信を持ってご提供する突板製品は、多くの住宅や公共施設にて採用されています。

内装の木質化は、今やカーボンニュートラルや脱炭素化の実現には欠かせないと言っても過言ではありません。

輸送過程での二酸化炭素排出量を大きく削減できる地産材(地域材)の取り扱いもございますので、ウッドインテリアをご検討中の方は、ぜひ一度“恩加島木材工業”の製品をご覧ください。

〈関連コラム〉

突板製品はこうして生まれる。森から現場までのプロセスは?生産工程や恩加島木材の強みを紹介


KDパネルとは

KDパネルは、台湾・KEDING社製の天然木化粧合板で、0.5mmの厚単板で木目の立体感を、特殊UV塗装で耐久性と抗菌性能を付与した今までに無い化粧合板です。

天然木本来の質感と、メラミン化粧板のような強度・施工性を兼ね備えています。

恩加島木材工業が自信をもって展開する日本初上陸のプロダクトです。

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PANESSE(パネッセ)

天然木練付化粧板のシリーズで、基材によって「不燃ボード」「難燃ボード」「MDF化粧合板」「突板シート」「有孔パネル」「テクスチャーボード」と多彩なラインナップを実現。

樹種も40種類以上からお選びいただけますし、産出地を限定した地産材のご注文も承っております。

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樹種別の特徴や木目のトレンドは?恩加島木材の人気樹種や選び方のポイントを解説


リブパネル・ルーバー

最近トレンドのリブパネルやルーバーも、その他化粧板と同じ樹種で製造しております。

リブパネルは、もちろん天然木練付化粧板に貼り付けた仕様で、あらかじめ工場でパネル組みをしている高精度・省施工型の製品です。

ルーバーも同様で、精度の高い高意匠ルーバーとして人気商品となっています。

基材は木芯・不燃(ダイライト、エースライトなど)からアルミ押出成形品(※ルーバーのみ)まで対応しておりますので、内装制限のある建物にもご採用いただけます。

リブパネルはHPより規格書もダウンロードできますので、是非ご検討ください。

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天然木の風合いを生かした“ルーバー”と“リブパネル” 特徴や不燃対応について徹底解説

突板製品はこうして生まれる。森から現場までのプロセスは?生産工程や恩加島木材の強みを紹介


用途を問わず様々な施設にご採用いただいております

恩加島木材の突板製品は、建物の用途を問わず様々な施設にご採用いただいております。

ホームページでは随時、施工事例や納入実績を紹介していますので、気になる方はぜひ併せてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|納入実績

恩加島木材工業株式会社|施工事例

一口メモ
世界的に著名な建築家・隈研吾氏が主宰する隈研吾建築都市設計事務所が設計した「和歌山県・有和中学校」新校舎にも、当社突板製品が採用されました。




恩加島木材の取り組みや今後の目標

私たち“恩加島木材”は、地球環境や森林維持のために様々な取り組みを行っており、国産材の積極的な利用はもちろん、製造工程の自然エネルギー活用など、トータルCO2排出量の削減に努めています。

再生エネルギーの導入

自社工場への太141kw陽光発電システムおよび蓄電池を導入いたします。
(2023年6月、稼働決定)

持続可能な製品の開発製造

植林木を利用した人工突板の開発を進めています。

地産材の積極的利用

日本の貴重な資源である“森林”、そして林業・製材業を守るため、原産地を日本国内ならず地域を限定した樹種を積極的に取り扱っています。

地産材の納入実績
JR北陸新幹線・長野駅 コンコース内天井(長野県産杉利用)
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)


「建築デザインに環境への配慮を反映させたい」「長く愛され続ける建物にしたい」そのようにお考えの方は、ぜひ私たち”恩加島木材工業”の突板製品をご採用ください。


〈関連ページ〉

恩加島木材工業株式会社|製品案内|原産地(日本)

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今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説

“人工突板”は天然木由来の建材。基礎知識やウッドショックとの関連性について解説



まとめ|変形リスクの低い木材は含水率15%以下

含水率の高い木材を建築材料として使うと、乾燥する段階で反りなどの変形や木割れを起こしてしまいます。

そのため、含水率15%以下に乾燥した木材を使うことが重要です。

突板化粧板は水分豊富な生材を薄くスライスしてから乾燥させるため、木割れのない美しい木目を表現できます。

“恩加島木材”は長年培った経験と知識をもとに、みなさんの設計デザインをお手伝いさせていただいております。

製品は、天然木突板を使った化粧板やフローリング材、ルーバー、有孔ボードなど多岐にわたっているため、空間のトータルコーディネートも可能です。

「環境に配慮した製品を取り入れたい」「統一性のある洗練されたデザインを実現させたい」とお考えの方は、ぜひに一度恩加島木材の突板製品をご検討ください。




日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”

難燃_不燃複合板

建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。

天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ6・9mm)を貼り合わせた材料です。

しかし、今までの不燃突板化粧板には施工上の問題点がありました。

  • 重い
  • 割れやすい
  • 高コスト
  • ビスが効かない


それらの問題を解決したのが、恩加島木材の不燃突板複合板」です。

天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。
※幅290mmまでは本実加工も可能です。

日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。

不燃突板複合板大臣認定取得





恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします

「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?

恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。

随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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