オフィスの「内装木質化」がデザイントレンド|メリット・デメリットと設計ポイント、補助金を解説

近年、オフィスデザインに木質建材を取り入れる「内装の木質化」がトレンドで、政府も法整備によって公共施設への採用を推進しています。
そこで今回は「オフィスにおける内装木質化」について、概要と推進されている理由、メリット・デメリットについて“木材のプロ”が詳しく解説します。
内装木質化プロジェクトを対象とする支援制度や補助金も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
●内装木質化には、環境面以外にも建物を利用する人の快適性や生産性を高めるメリットがあるため、様々な用途の事例に採用されており、その数は少なくありません。
●恩加島木材は、高品質・レパートリー豊富で環境にも配慮した「突板化粧板」を製造販売しております。
Contents
「内装木質化」とは|木造化との違い

「内装木質化」とは、建物の内装仕上げに木材や木質建材を使用する設計手法を指し、無機質で冷たい印象になりがちなオフィスにナチュラルな印象をプラスできます。
似た言葉に「植物の木質化(木質化植物)」がありますが、こちらは植物の茎や幹などが硬化して茶色く変色し、まるで木のようになる現象を指し、「内装木質化」と関連性はありません。
「内装木質化」とセットで使われることの多いキーワードが「木造化」です。
| 内装木質化 | 内装の仕上げ材に木材・木質建材を使用し、インテリアに温もりやナチュラルデザインを取り入れる意匠的な設計手法で、構造種別は問わない |
| 木造化 | 建物の主要構造部(柱・梁・壁・床・屋根・階段など)に木材を使用する設計手法で、内装仕上げ材は問わない |
内装木質化は、構造耐力や防火規定の観点から木造にすることが困難な場合でも採用でき、鉄筋コンクリート(RC)造・鉄骨(S)造・鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造のテナントビルにも容易に取り入れられるため、中大規模建築物への採用事例は少なくありません。
国土交通省では、建物のデザイン性・持続可能性と木材利用率の向上を目的に、管轄の公共建築物について、内装の木質化を原則としています。
国土交通省が整備する公共建築物について、関係法令等の制約により木材を利用することが困難な場合を除き、エントランスホール、情報公開窓口、広報・消費者対応窓口、記者会見場など、直接又は報道機関等を通じて間接的に国民の目に触れる機会が多い部分のいずれかにおいては、原則として内装等の木質化を図る。
なお、内装等の木質化に当たっては、利用者に木の表情又は温もりによる癒しを与えられるよう配慮するものとする。
さらに、木造化や内装等の木質化に当たっては、技術開発の推進や木造化に係るコスト面の課題の解決状況等を踏まえ、CLT(直交集成板)、木質耐火部材等の新たな木質部材の活用に取り組むものとする。
2021(令和3)年10月1日に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法)」が制定され、対象が公共建築物から建築物一般に拡大したことにより、内装木質化の事例は増え、最新データでは1年間だけで国が整備する公共建築物で内装木質化を採用した事例は27棟、国以外が整備する公共建築物では90棟で採用されました。
(参考:国土交通省|国土交通省における木材利用推進の取組について(令和4年度))
オフィスの「内装木質化」が推進される理由とメリット

政府が法律を制定してまで内装木質化を推し進めている背景には、環境面や社会的・経済的な利点に加え、建物利用者の健康や快適性向上につながるメリットがあります。
環境面での効果
内装木質化によって木材利用率が高まると、その分、森林サイクル※が活発になり、伐採後の再植林が進んで森林の若返り、ひいてはCO2吸収効果が高まります。
※森林サイクル:「植林・間伐・伐採・利用・再植林」の循環を指し、樹木を定期的に植え替えることにより、成長の過程で多くのCO2を吸収するため、地球温暖化対策として重要視されている
▶︎おすすめコラム:“森林循環”の重要性|問題点・課題と取り組み事例、SDGsとの関係性
木材の平均炭素貯蔵量※の平均は、木材重量(絶対乾燥重量※)の50%程度とされていますが、老齢化している樹木はほとんどCO2を吸収しません。
※炭素貯蔵量:樹木が成長の過程で光合成により大気中のCO2を取り込み、木材として利用される間に貯蔵(固定)される炭素量
※絶対乾燥重量:木材から水分が完全に乾燥した状態の重量
実際に、日本の森林では樹木の老齢化が進んでおり、10齢級(林齢46〜50年)以上の人工林は総人工林面積の約51%を占めており、伐採⽊材製品(HWP※)を除くCO2吸収量は年々減少しているのが現実です。
※HWP:Harvested Wood Productの略称で、森林から伐採され搬出された木材とそれから作られる製品を指す

そのため、日本の森林は伐採・木材利用をさらに進め、再植林による若返りの必要を迫られています。
木材利用が促進されている背景には、他の素材よりも製造・加工時におけるCO2排出量が少ない点もポイントです。

社会的な効果
オフィスに内装木質化を取り入れると、業務効率や企業イメージ・ブランド力の向上につながります。
実際に林野庁が実施した内装木質化に関するアンケート調査では、以下のような感想が上がりました。
- 業務の効率アップの結果が現れはじめた(自社ビル・設置者)
- 開業後、稼働率が向上した(シェアオフィス・設置者)
- 施設を木質化して、企業イメージが向上した(研修施設・設置者)
- 木質化が職場の選択理由となり、人手不足の解消につながった(診療所・設置者)
- 地域材を PRでき、地元の林業支援に繋がった(展示資料館・設置者)
- 来訪者に対して自社の業務内容・企業理念を PR できる(工場・設置者)
(参考:林野庁|内装木質化した建物事例とその効果)
これら、建物設置者のメリットに加えて、社会全体に好影響を与えるマクロなメリットもあります。
- 林業・製材業を生業とする地方経済の活性化
- 林業・製材業の活性化による雇用増加
- 地域の独自性PRによる地域創生の促進
経営面での効果
オフィスの内装木質化は、居心地の良さとデザイン性の向上により、経営面でも好影響をもたらす可能性があります。
- 来訪者を増やす
- 来訪者の滞在時間を延ばす
- 就労者から選ばれる企業になり、人手不足を解消できる
これらにより、企業の収益性アップにつながった事例は少なくありません。
衛生面での効果
木材や木質建材を内装仕上げ材に採用すると、以下の効果を期待できます。
- 調湿効果(室内の乾燥・湿潤を軽減でき、カビの繁殖を抑制できる)
- 消臭・抗菌効果(木材にはアンモニアなどの悪臭成分を吸着する機能があり、精油成分には黄色ブドウ球菌に対して高い抗菌効果がある)
- ダニの除去効果(木材の匂い成分には、ダニの行動抑制をもたらす)
就労者の心理的効果
オフィスの内装を木質化すると、木の匂いにより心理的効果が生み出されます。
- 免疫力アップ効果
- リフレッシュ・覚醒効果
- 疲労感・ストレスの緩和効果
- 集中力アップ・注意力維持の効果
- 作業性・業務効率・モチベーションを高める効果
- 空間に愛着が湧く効果
(参考:林野庁|内装木質化による 効果の検証)
また、ナチュラルな木目が視界に入ると、脳の活動鎮静化や心地良さ・落ち着きを感じやすくなることが研究により明らかになっている点もポイントです。
実際に、林野庁が実施した内装木質化に関するアンケート調査では、ポジティブな結果が出ています。
- 社員同士のコミュニケーションが増えた(事務所・社員)
- 雰囲気が良く、モチベーションが高まる(シェアオフィス・管理者)
- 集中して業務を続けても疲れにくい(研究所・職員)
- 長時間滞在していても、心理的な不安や負担が減った(展示施設・管理者)
▶︎おすすめコラム:今“内装の木質化”が注目されている訳とは? その効果や取り入れるべき建築物について徹底解説
オフィス「内装木質化」のデメリットと設計における注意点

オフィスの内装木質化は、企業価値を高め、人材確保や収益性アップにつながるメリットがある反面、デメリットや注意点もあります。
内装制限の規定に注意が必要
オフィスの内装を木質化する際にキーワードとなるのが「内装制限」です。
内装制限とは、オフィスなど公共性の高い建物で火災が発生した際に、内装材が燃焼して建物利用者の避難を妨げることを防ぐための建築基準法と消防法で定めるルールで、天井・壁に使用できる建材が制限されます。
(参考:e-GOV法令検索|建築基準法|第35条の2「特殊建築物等の内装」)
一般的なオフィスは、建築基準法における特殊建築物※には該当しませんが、以下のいずれかに当てはまる場合は内装制限の対象になるのでご注意ください。
- 3階建て以上で延べ床面積が500㎡を超える建物の居室・避難経路
- 2階建てで延べ床面積が1,000㎡を超える建物の居室・避難経路
- 平屋建てで延べ面積が3,000㎡を超える建物の居室・避難経路
- 火気使用室があるオフィスの居室
- 無窓居室があるオフィスの居室
※特殊建築物:学校・体育館・病院・劇場・観覧場・集会場・展示場・百貨店・市場・ダンスホール・遊技場・公衆浴場・旅館・共同住宅・寄宿舎・下宿・工場・倉庫・自動車車庫・危険物の貯蔵場・と畜場・火葬場・汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物
(参考:e-GOV法令検索|建築基準法|第2条の2「用語の定義」)
内装制限の対象となる空間の内装材には、防火材料(不燃・準不燃・難燃材料)のうちいずれかの使用と消火設備の設置が義務付けられます。
そのため、内装木質化を採用したい場合は、プランによって不燃木材や不燃突板化粧板などを選定しましょう。
恩加島木材では、天然木の魅力を活かせる不燃突板化粧板を製造・販売しております。
▶︎おすすめコラム:建築基準法で定められた“内装制限”とは? 概略や緩和から「木」を取り入れる方法まで詳しく解説
▶︎おすすめコラム:公共施設・商業施設に欠かせない不燃材料。防火性能や突板練付不燃板について解説
仕上げ材によってはキズ・汚れのメンテナンスが大変
オフィスは不特定多数の人が出入りする可能性もあり、無垢材などを仕上げ材に用いると、すぐにキズついたり汚れたりする可能性があります。
また、無塗装の木材は水拭きできず、水分がかかるとシミになるのでご注意ください。
そのため、オフィスに木材や木質建材を採用する場合は、キズや汚れがつきにくい塗装済みの材料がおすすめです。
恩加島木材では、高品質なウレタン塗装に加えて、表面に耐摩耗性を高める特殊UV塗装を施した突板化粧板を販売しております。
建築コストが高くなる
壁や天井などを木材や木質建材で仕上げると、塗装・クロスの仕上げよりも建築コストが高くなります。
ただし、木材や木質建材は塗装・クロスよりも高耐久で耐用年数が長いため、長期的な視点で考えると、決して損ではありません。
輸入材を使用すると脱炭素効果が低い
環境面の観点から内装木質化を採用する場合、木材・木質建材の原料が輸入材では、脱炭素効果が十分とは言えません。
なぜなら、国内で育つ国産材や地域材と比べて、海を渡って運ばれる輸入材(外材)は、輸送距離(ウッドマイレージ)が長く、その過程における化石燃料の使用によって多くのCO2を排出するためです。

そのため、「地球温暖化対策に貢献したい」という目的でオフィスの内装木質化を進める場合は、国産材の使用にこだわりましょう。
確かな理由がなく「環境にやさしいオフィス」などとPRすると、グリーンウォッシュ※に該当する恐れがあるのでご注意ください。
※グリーンウォッシュ:企業が「実際には環境に十分配慮していない」「環境配慮性の根拠が明確ではない」にもかかわらず、環境に優しいと見せかけてPRする行為で、近年世界的な問題になっている
恩加島木材では、突板の原料となる木材を国内からも多く仕入れ、地域・樹種を限定していただくことも可能です。
▶︎おすすめコラム:今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説
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「内装木質化」はオフィス以外にも拡大中

内装の木質化は、オフィスだけではなく様々な用途の建物に採用されています。
- 教育施設(学校・幼稚園など)
- 保育施設(保育園・子ども園など)
- 福祉施設(高齢者施設・児童施設・障害者支援施設など)
- 医療施設(病院・クリニックなど)
- 公民館・図書館・体育館・ホールなど
- 駅・ホテル・店舗など
それぞれの施設に内装木質化を取り入れることにより、オフィスと同様のメリットを得られます。
(参考:林野庁|内装木質化した建物事例とその効果)
「内装木質化」に関連する支援制度・補助事業

政府は建物の内装木質化と木造化を促進するために、いくつかの支援制度・補助事業実施を予定しており、令和8年度政府予算概算要求にも盛り込まれています。
| 【国(林野庁)】 森林集約・循環成長対策のうち林業・木材産業循環成長対策のうち木材需要拡大・木材産業基盤強化対策(木造公共建築物等・木造非住宅建築物等の整備) | 公共建築物及び非住宅建築物の木造化・内装木質化に対して、以下の内容で補助 ⚫︎木造化:交付対象の建築工事費15%以内の補助金支給 ⚫︎内装木質化:交付対象の木質化事業費1/2以内の補助金支給 |
| 【東京都】 公共施設への多摩産材利用促進プロジェクト事業 | 東京都内に所在する区市町村立施設における多摩産材を使用した木造化・内外装の木質化に対して、以下の内容で補助 ⚫︎補助対象経費の1/2以内の補助金支給(内装木質化は上限3,000万円) |
| 【大阪府】 民間施設における木質空間整備事業補助金 | 大阪府内に所在する公共建築物における大阪府内産木材を使用した木造化・内外装の木質化に対して、以下の内容で補助 ⚫︎補助対象経費の1/2以内の補助金支給(上限3,000万円) |
(参考:林野庁|建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧、林野庁|木材利用促進本部事務局「建築物の木造化・木質化支援事業コンシェルジュ」)
自治体ごとの補助事業は、東京都・大阪府以外にも実施されていますので、詳しくは管轄部署に詳細をご確認ください。
「内装木質化」におすすめの恩加島木材「突板貼り化粧板シリーズ」

恩加島木材は、国内外から多種多様な突板を仕入れ、天然木の風合いを残した高品質な「突板化粧板」を製造している建材メーカーです。
突板化粧板とは、突板と呼ばれる天然木を0.2〜0.3mmの薄いシート状にスライスした素材を合板などに接着したパネル材で、内装仕上げや家具・建具の材料として使用されています。

恩加島木材が自信を持って提供する「突板化粧板の強み」は以下の点です。
- 無垢材と同様の「ナチュラルな見た目と質感に仕上がる」
- 工業製品なので、無垢材よりも「品質と寸法の安定性が高い」
- 無垢材よりも軽量化が可能で、「施工効率性アップにつながる」
- 無垢材よりも温度や湿度の環境変化による「変形リスクが少ない」
- 希少性があり高価な樹種でも、「無垢材より安価で安定して材料を入手しやすい」
- 原木1本から取れる突板面積は無垢板材よりも広いため、「同じ風合いを大量入手しやすい」
- UV塗装などの特殊塗装により「表面の耐摩耗性・耐汚性が高い」
- 通常の化粧板と同じ突板を用いた「不燃・難燃材料認定取得済み化粧板」もあり、内装制限など防火規定の対象部分と非対象部分の仕上げを揃えられる
さらに弊社では、国産材や地域材、間伐材、成長の早い小径材を積極的に活用し、「人工突板」の開発・製造にも努めるなど、森林活性やカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを行っています。
● 豊富な樹種・木目とUV塗装も選べる「PANESSE(パネッセ):非不燃・不燃天然木練付突板化粧板」
● 重い・割れやすい・高コスト・ビスが効かないなどの懸念点を解消した「不燃突板複合板」
● 国内初・組み立てた状態で準不燃認定を取得した「リブパネル」
● 国内初・孔を開けた状態で不燃認定を取得した「有孔ボード」
▶︎おすすめコラム:突板製品はこうして生まれる。森から現場までのプロセスは?生産工程や恩加島木材の強みを紹介
まとめ
オフィスなど公共的な建物で「内装木質化」が進んでおり、政府は木材利用の促進を通じて脱炭素・カーボンニュートラルの目標達成に取り組んでいます。
内装木質化には、環境面以外にも建物を利用する人の快適性や生産性を高めるメリットがあるため、様々な用途の事例に採用されており、その数は決して少なくありません。
恩加島木材は、高品質&レパートリー豊富で、環境に配慮した「突板化粧板」を製造販売しております。
「思い通りのデザインを実現したい」という方は、恩加島木材の突板製品をご採用ください。


